泣き叫ぶ女の子

それは私と旦那がQuick(フランスのロッテリアのようなもの)に行った日曜日の出来事。私たち夫婦がハンバーガーを食べ終え、だらだらとおしゃべりをしていると、アラビア人っぽい5歳くらいの男の子が店内に入ってきた。すると突然その子は何も言わずに手に持った色紙を次々と店内のテーブルに配り始めた。

「何?何?何してんの?あの子?」


ぽかーん?と男の子を見つめていた私。当然その色紙は私たちのテーブルにも回ってきた。その色紙に書かれていたのは・・・・

je vous donne ce poème que j’ai écrit. J’ai un  petit frère et une petite soeur et je ne peux pas acheter de pain pour le repas de ce soir.  Pouvez vous me donner un peu d’argent….?

これは僕が書いたポエムです。。僕には弟と妹がいるけど、今日の夜ご飯のパンが買えません。僕にお金を恵んでください・・・

そこまで読んだところで、今度はQuickの店員が色紙を回収しに来た。店員は子供に叱る。「店内でこういうことをしてはいけません。お店のものを買ってないなら、出て行きなさい。」

いやぁ、まあそりゃそうだと思って聞いていると、その男の子がアクセントのあるフランス語で叫んだ。

「人種差別だ!」

その言葉を聞いて私は胸が痛んだ。一体この子は家でどういう教育をされているのだろうと。Quickの店員が言っている事は正しいし、たとえその男の子がフランス人であっても同じことをしたはずだ。何か自分に不利になることがあったら、「人種差別だ」と叫ぶように教育する親とは一体どういう親だ!そもそも日曜日に子どもを働かせる親は一体何考えてるんだ。その男の子の目には、子どもの無邪気さ・無垢さがなかった。子ども特有のがなかった。ものすごく淀んだ目をしていた。


これがフランス社会問題の1つ、「移民問題」である。戦後、自国の経済復興のため、アフリカ・アラビア・経済発展の遅れたヨーロッパの国などから多くの移民を受け入れたフランス。それが現在にも続く大きな問題になっている。なぜなら移民してきた人の多くは3K低賃金労働に従事しており、そのせいでフランス国内で移民による盗み・恐喝・暴力事件が絶えない。

また、フランスに長く住んでいるにも関わらずフランス社会・フランス人に合わせようとしない。フランスに長年いても自分の国の言葉で話し、フランス語は全く話せない。学校の体育の授業でも自国の宗教を象徴するベールを外さない。就職の面接に落ちたら、「人種差別」と言って抗議する。これはアラビア人に多い。

フランス政府もこの移民問題に対処しようと、サルコジもまた新しい政策を施策。そのせいで同じく移民である私にも、フランス滞在のための色んな面倒な手続きが課せられる。全くやれやれだ。それはともかく、そもそも問題の根源は移民してきた人たちがフランス社会を尊重しない点でにある。私にはこの点が理解できない。郷にいれば…という言葉は世界共通じゃないのか。

世の中、完璧な人間がいないように完璧な社会・完璧な国というのは存在しない。パリ症候群という言葉が存在するように、いくらフランスをおしゃれで美食の国と夢見てもフランスにも深刻な社会問題がある。それが現実だ。それでも、せめて「子どもたちが子どもらしくいられる社会」になってほしいと心から思う。

写真:Rifat Attamimi


5 コメント

  1. こんちわ。ライブドア経由できました。
    このブログ面白いですね。

     さて、この記事読んで、「あ~、コレ、日本の在日問題と一緒か」と思いました。
     かつて搾取された方(元植民地)は
    「これまでの差別による不利益を取り戻して何が悪い!!!」
    と思うし、
    搾取したほう(宗主国)は
    「お前が言っていることはヤクザか当たり屋とかわんね~だろ!!」
    という平行線の議論が続くわけですね。

    具体的なフランスの負の遺産を見せてもらいました。
    いや~、深刻ですね。

    この例からするとフランスサッカー代表のジダンは日本の張本勲、、金村義明のようにビンボーと自分のアイデンティティの確立のためにスポーツに身をささげたのだな、と分かりました。

  2. これが現実なんですね。
    だから、「日本ももっと外国人を受け入れて開かれた国にしましょう!」
    などと気易く言う人間には心底ウンザリします。

  3. 問題の根源は「移民問題」よりももっと深い、ヨーロッパの帝国主義までさかのぼります。
    場合によっては、十字軍まで。
    まあそれを言ったらきりがないので言いません。

    本当に差別がないのかは簡単に調べられます。
    女性だったら、ムスリム女性のようなスカーフと服装で、普通のフランス人がいる場所へ行って見ればいいのです。
    男性だったら、モハメッドとか名乗って、就職活動して見ればいいのです。
    やってみたらいかがですか?

    在日はぜんぜん違うケースです。
    日本は韓国から何も搾取しませんでした。(というか、何もなかった。)

    搾取が過去形ならまだしも、現在進行形で搾取し続けている、北アフリカ諸国に内政干渉している、のが問題の根源です。
    日本は韓国に内政干渉していません。(っていうか、逆に、されている。)
    90年代初頭では、アルジェリアで民主的な国民選挙によってイスラム系政党が選ばれた途端、フランスは軍隊を送りつけ、脅し、拷問、虐殺によって、親フランス傀儡政権をうちたて、その結果、政治難民と化したアルジェリア人がフランスに移住しました。
    あのころの事は、アルジェリア在住だった日本人から、いろいろと聞かされていたので、フランスに移民問題で同情はできません。
    今年、フランスは頼まれてもいないのに、リビアに空爆し、「空爆代を払え。」と、リビアにたかる始末。
    フランスは今度はリビア人の移民が欲しいのか、と思ってしまいます。
    要するに、フランスは、北アフリカ系難民を創りだした張本人なので、移民問題では「クロ」なのです。

    しかも、「ベール」問題。
    「目立つ宗教的なものがダメ。」というなら、なぜ、シャンゼリゼにクリスマスイルミネーションが堂々と飾られるのか、フェアだと思えるような説明は、まだ聞いたことがありません。
    そもそも、「自由」だと掲げているわりに、ベールはダメ、とか、裸になるのは自由でも隠すのは自由ではないなんて、「自由」とは言えません。
    本当に「無宗教」を掲げるのならば、ひと昔前の中国ぐらいやるべきで、宗教的なベールがいやなら、「人民服」でも導入するべきですよ。
    「自由」を掲げるならば、ベールでもブルカでも、裸でも許すべきです。
    ベール問題は「弱いもの(女)いじめ」にしか見えません。
    まあ、中世以来、フランスがというよりヨーロッパがどれだけイスラムを嫌っていたかはあまりにも有名ですが、イスラム教徒はヨーロッパをというか、キリスト教徒をぜんぜん嫌ってないのも事実なのです。(これは別の機会に説明しますが。)

    「郷に入れば郷に従え」と言いますが、それが出来ている人間はこの世界にはいません。
    日本人でさえ、海外でも日本食を食べているし、正月を祝ったり、着物も着たりしています。
    私は何度か北アフリカに行った事がありますが、イスラム教徒が多数いる国で、ベールの女性たちの前で、あからさまに超ミニスカート(フランスでは売春婦以外はかないような)をはいて足をみせびらかしているフランス女性(売春婦ではない)を何人も見たことがあります。
    完全に挑発ですね。

    「自由」と言いつつ、「自由」では無く、「ミニスカートを履くのは売春婦だけ」と言いつつ、イスラム国では履く、「平等」と言いつつ、嫌いな(イスラム)宗教の人間には職を与えず、「もう中世ではない」と言いつつ、まるで十字軍がまだ生きているかのようにイスラム教徒を迫害し、「帝国主義時代は終わった」と言いつつ、イスラム国に内政干渉を続ける。

    これで、フランスが平和になるはずないじゃないですか。

    移民に自分たちの国に帰って欲しかったら、もう、アジア、アフリカ、中東諸国に、「手かせ」「足かせ」をはめるのは止めて、ほうっておいてあげるべきです。
    彼らはもともと家族の絆が強くて、他国に移民なんてしたくない人々なんですから。

  4. 上3コメントのように、結局は排他論が強まってしまうのは悲しいです。

    複雑な歴史うんぬんは堂々巡りで答えが遠く、現実に生きる人を忘れた極論に偏り勝がちで怖いです。

    「衣食足りて礼節…」という言葉だけ信じれば、
    まずは移民労働にも最低限保障をすることで初めて「尊重」という礼の発想ができる
    「余裕」を生むんじゃないかな~と思います。

    奴隷同様低賃金で使い倒しておいて尊敬しろっていうのは、
    自然に考えてヤハリ難しい事なのではないかと思ってしまいます。
    好きで子供に物乞いさせる人はきっと居ないと信じてます。

    つじつまや論理が合おうが合うまいが気軽にDeleteしてしまえないのが「人間」ですから、
    理屈と同様に現実も突き詰めてもらいたいものです。

  5. これはね、国に関わらず社会的地位や信頼が低い人が良く陥る問題ですね。
    必ずしも差別ではないんだけど、例えば恋愛や結婚に関しては食のタブーや、宗教がある場合、
    やはり、躊躇することが多いと思います。
    そして、移民の彼らも、母国に帰ればマジョリティで、やはり同じ宗教や言語など共通項を持つ人と固まりたがる。でも、その視点の切り替えがなかなか出来ない。
    欧州にい移民(特にイスラム移民に対する根強い)差別があるのは事実ですがすべての行為がそうだとは限らない。
    ただ、人種差別(他者や社会を敵とみなしたり、悪とする)方が、自らを客観的にみることをしなくていいので、楽なんですよ。

    >匿名希望さん、共感します。

    ただ、フランス人女性に対しては、好きな服を着ろといいつつ、ムスリマに対しては好きな服を着る自由をあたえず、公衆の場所でブルキニを暴力をもって、公権力が脱がせている。

    たとえば、警察が白人女性のスカートを脱がせたり、シャツを無理矢理脱がせたたら、確実に犯罪ですよね。

    自由と平等、女性の権利を叫びながら、その実上記の事が行われている事はとても悲しい事です。
    そして多くのテロリストは男性ですし、フランス人女性の分厚いコートや、男性のブリーフケースにも
    爆弾や武器は隠せます。

    そして、本当にイスラムの国(西欧とは全く異なった価値観や、歴史、伝統があるところ)で、
    その国に対してタブーであることを堂々とすることは、なにより帝国主義と、植民地主義から続く西欧の汚点、というか恥部である優越感の表れだと思います。

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