結婚を約束した私たち2人。これから2人で幸せになろう、そう誓ったはずなのに現実は思わぬ方向に進んだ。

彼は留学先の(日本の)大学を卒業し、2人の生活のため日本での就職先を探し始めた。当たり前な話だが、外国人が日本の企業に就職する場合に必要になるのは日本語力である。どの会社に行っても聞かれるのは「日本語検定1級持ってますか?」であり、NOと答えればあっけなく門前払い。それでも彼は1日中望みの少ない就職活動に力を注いだ。そして夜、私が仕事から帰ってくるのを1人で待つ。そんな毎日を送っていた。

 

新社会人生活が始まった私はといえば、1日中仕事のことばかり考えるようになった。入社したての私は同期に遅れをとらないように必死だった。この会社で長く働こうなんてことは微塵も思ってなかったけど、それなりにやりたいことがあって入社した会社。その時その時の自分の目の前にあるものにのめり込んだ。契約orアポがとれたで一喜一憂し、家に帰っても仕事のことを考えてしまう。

 

仕事と結婚が一気にやってきた22歳の春。

私には余裕がなかった。

 

特に疲れて帰ってきた時などは、ただただ静かに休みたかった。何も考えない、頭を空にする時間がほしかった。

ところが1日中1人で家の中で待っていた彼にとっては違った。やっとリリーが帰ってきた、今日は何をしよう?ウキウキ気分で好きな音楽を大音量で流す。

「ごめん、ちょっと今疲れてるから音楽消してくれない?」私がそう言うと、彼は悲しそうに言った。

「何だかリリーが遠くなった」

彼の話を上の空で聞く私に、

「またリリーが遠くなった」と言った。

「これから2人の人生をスタートさせるって時なのに、リリーは僕からだんだん遠くなる」と彼は言い、私はその言葉に何ともやり場のない気持ちになった。

日々の経過と共に2人の間に少しずつ距離ができる。

 

それでも休みの日には「将来はどんな家に住もうか?」、「子どもができたらどんな名前にしようか?」と、2人でつくる幸せの形についてよく語り合った。2人の抱える現実とは裏腹に、2人の夢が膨らんだ。頭であれこれ考えることがなくなると、自然と自分の心の声が聞こえた。私が彼をどんなに愛し、必要としているか。そして自分にとって一番大切なモノは何なのか。何があっても彼を失いたくない、そう思った。

 

ところが月曜日、仕事がまた始まると頭は完全に仕事モードに戻った。せっかく縮んだ彼との距離がまた少しづつ開く。彼は私の変化に私よりも早く気づき、そして傷つく。そんな毎日の繰り返しだった。

 

仕事場の人には「婚約者がいる」と伝えていた。しかしこれが間違いだった。先輩たちは新人の私に対して「結婚早いんじゃない?まだまだ人生楽しいことがいっぱいあるよ!」だとか、「本当に彼のことを本当に良く知って結婚するの?」だとか、「彼は本気でプロポーズしてきたの?」といったようなことを変化球で質問してくる。最初のうちは全く気にしていなかった。「私たちのこと何も知らないくせに」と腹の中で思っていたほどだ。それでも毎日毎日同じようなことを言われ続けると、彼に愛されている自信がなくなってきた。

 

あんな素敵なプロポーズをしてくれたけど、本当にこの先ずっと私を愛し続けてくれるのだろうか?

今だけの感情じゃないのか?

将来、彼の気持ちは変わってしまうのではないか?

 

そんなことを考え出すようになったある日。とうとう我慢できなくなって彼に聞いてみた。

「ねぇ、私のこと本当に愛してくれてるの?結婚するって今だけの気持ちなんじゃない?」

 

すると彼は絶望に似た表情を浮かべてこう言った。

Riri, I love you and I want to build my life with you. I told you that day after day we get more and more far. Your job is becoming an obsession and no matter how much we talk about it you just forget everything and start to get far again right after you go back to work. This company is not a good one for you, it doesn’t lead to hapiness but only to self destruction. I love you and I will always stay by your side but if you go back to work tomorrow I fear that a future together and building the happy family that we dreamed of is just gonna stay a dream forever. If you go  to work tomorrow then I think that we have no future anymore…

リリー、君を愛しているし、一緒に人生を築いていきたいと思うよ。でも前にも言ったとおり、僕らはどんどん離れていっちゃてる。君は仕事にどんどん取りつかれていく。どんなに話し合っても君はすぐに全部忘れて、仕事から戻ればまた僕から遠くなってしまう。この会社は君にとって良くないし、幸せになるどころかめちゃくちゃにするだけだよ。君を愛してるし、ずっと君のそばにいるけど、もし明日仕事に行くなら、もう僕らの未来と僕らが夢見ている幸せな家庭ってのはいつまでたっても夢のままになるんじゃないかと思って怖いんだ。明日仕事に行くなら、もう僕らに未来はなくなっちゃう・・・

この時のことを思い出すと今でも不思議な気持ちになる。

気がついたら私はわんわん大泣きしながら、先輩に電話して「辞める」と告げていた。何であんなに泣いたんだろう?今でもよくわからない。小さな子どもみたいに力の限り泣いた。いつまでも泣き止まない私に彼は「これはリリーの人生のなかで一番大きな決断だったんだね。でも大丈夫だよ、僕が君を幸せにする」と言ってくれた。何だかよくわからないけど、ほっとした。ほっとしたらまた涙がでてきた。とにかく泣いた。

 

本当に翌日から会社に行かなくなった。会社を辞めた。自分でもビックリするほどの非常識野郎である。その後会社の上司に謝りに行き、予想通り常識がないとこっぴどく叱られた。でも、それでも私はどこかスッキリしていた。やっと元の自分に戻れたような気がした。そうだ、私の幸せは、私の夢は、私にとって一番大切なことは、彼と幸せな家庭を築くことだ。彼と幸せになりたい。

 

私が仕事を辞めたことを機に、私たちはより結束を固くし、本格的に2人の人生を築くことになった。

 

[国際ラブストーリー8~国際結婚最大のやま場と人生最大のヒミツに続く・・・]

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