失業者

前回は機能していないフランス雇用センターの問題点を挙げたが(pole-demploi)、フランスの労働問題としてしばしば挙げられるのが、学生のインターンシップ制度(stage)である。日本では大学新卒者の内定率が落ち、就職浪人が続出するようだが、フランスの若者の就職状況もまた深刻である。ワーキングホリデーの情報サイト、フランスワーホリニュースにはこんな記述がある。

『ワーキングホリデービザではアルバイトが可能ですが、若年層の失業率の高いフランスでの仕事探しは容易ではありません。そのため、ワーキングホリデーの予算計画を立てる際には現地でのアルバイト収入に依存した計画を避ける事をお勧めします。

また、ワーキングホリデーを利用して、キャリアアップのための有給のインターンシップ(就業体験)も可能です。フランスの場合はコネクションが重要な要素になりますので、このような場合は専門の会社に相談されると良いでしょう。』

これからも推測できるように、フランスでの若年層の就職探しは日本のそれとは基本的に異なる。フランスではインターンシップが就職ゲットの近道とされ、就職面接におけるインターンシップ経験の有無が直接採用・不採用に関係するため、その重要性が高い。

日本のインターンシップ

それでは具体的に、日本で導入されているインターンシップ制度とは何が違うだろうか?

まず、日本の場合、インターンシップは職業訓練というよりも、「社会勉強」の意味合いが強い。私も大学3年生の春、ある旅行会社にインターンシップをした。その時期が旅行パンフレットの入れ替えの時期であり、2週間やたらパンフレットの裏のスタンプ押しをしたのを覚えている。旅行会社への就職を特に希望していたわけではなかったからかもしれないが、これといってためになった経験とはいえない。というのも、日本では、社会人と学生をきれいに線引きするからである。その旅行会社の署長さんは私に気を遣ってか、あれこれ旅行業界の説明をしてくれたが、どれも「学生の目線に立った」もので、会社の守秘義務もあるのだろうが、いまいちリアルな部分が伝わってこなかった。もちろん日本のインターンシップもいろんな形態があり、会社によって様々だが、「インターンシップ経験なし」の採用希望者が他と比べて不利になることはあまりない。

それに引き替えフランスでのインターンシップは、その会社の就職希望者を「競争させる場」の意味合いが強い。仕事を学生に教えるなかで、誰が覚えがはやいか、誰がリーダーシップがあるか、ストレスに強いのは誰か?といったことをじっくりと企業側は検討する。インターンシップをさせることで、優秀な人材を選別するのだ。

しかし、これはインターンシップが本来の機能を果たしている場合であって、実際は企業側の人件費削減のためにインターンシップ生を使うということが多く、これがフランス労働市場の問題点として挙げられるのだ。これは日本の派遣労働者問題と少し似ている。

例えば私の義姉。彼女は法学部大学院卒で、専門はメディア規制法。某テレビ局にインターンをしていたが、お給料は1か月3万円程度だったそうだ。社員と同じように出勤し、社員と同じような仕事をして1年が過ぎた。当初は研修後に社員になれる可能性があると言われていたのに、一向にその声がかからない。この不況下ならこの先も社員になれるという声はかからないと踏み、辞める。彼女の場合は1年で見切りをつけたが、実際何年間も研修生のままで働かせているケースもあるらしい。社員のうちほとんどがインターンシップ生という会社もあるそうだ。

考えてみれば、インターンシップというのは企業側にとってとてもおいしい制度である。フランスの場合は、日本に比べ簡単に人を解雇できない。よって、新たに人を雇うとなればリスクが生じる。インターンシップを導入すれば、そのリスクを最小限に抑えることができる。その上、給料を支払わなくてもいいので多くの研修生を受け入れれば、コストダウンにもなる。もし私がフランスで経営者をしてたなら、周りと同じようにコスト削減のためにインターンシップを導入していただろうと思う。

stagiaire

不況のせいで、フランスの会社が採用するのはインターンシップ生だけだという声もある。“インターンシップ制度は任意の奴隷化制度だ!”と主張し、企業側に抗議する団体ジェネラション・プレケー(不安定世代:Génération Précaire)、通称白マスク族はインターネットで仲間を集め、ストライキを決行。全国の同じ悩みを抱えた学生や失業者、臨時職従事者などから拍手喝さいを受けた。

以前、フランスは日本に比べて、「平等教育」が徹底しているという記事を書いたが、今の時代、フランスでは大学院卒でも就職は難しい。たとえ教育が平等であっても、「就職」という末端の部分での競争は激しく、日本の新卒者の状況よりも事態は深刻だ。結局は、フランスでいい会社のいいポストに就きたいのなら、高い授業料を払ってビジネススクールに通う必要があると述べる管理職の人たちもいる。

一国の教育制度を充実させることと失業率を下げることは、密接な関係があり、両方を実現させるのはなかなか難しいのかもしれない。「採用」という切符を手に入れられると信じ、タダ働きしてきた白マスク族の反乱に企業側はどう対応していくのか?今後もフランスで注目を集めるだろう。

↓インターンシップ生によるストライキのニュース

写真:Luis Colás

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2 コメント

  1. こんにちわ、はじめまして。
    そうか、stageをインターンシップと訳せば、わかりやすいですね。
    stagiaire=「実習生」??でした。安定した雇用を得るまで(たしか28歳?)、何をしているのだろうと思っていました。
    数年前、マクドの店員でサンディカリストが執筆した”Generation precaire”
    (ed.Cherche midi)を読みましたが、この名を冠したアソシアシオンもあるのですね(HP見つけました)。
    日本でも(ほんの)一部の学生たちが、現在の「就活」のあり方に抗議するデモもしたようです。大学生の就職内定率が60%に満たず、また「正社員」で就職しても「長期で安定的雇用」はこれもほんの一部。新卒の半数はアルバイトその他の非正規で、正規での就職1年内に失業の不安を抱えている青年が3割とか…
    フランスのStagiairesのストライキはたまりかねた末の行動とはいえ…ほんとうに勇気ある青年たちですね!
    前回のpole emploiの調査紹介も大変興味深かったです。その他の文明・文化比較についても、楽しみにしております。

  2. 日本の就職氷河期は大学進学率が多くなり、全員が大手企業応募してるから枠がたりないだけ。それにくらべて日本の技術力の要である中小企業は閑古鳥・・・。