サービス大国、日本。

日本に観光に来た外国人は「日本のサービスは素晴らしかった!」と口を揃えて言う。日本にいるとあまり気にとめないが、確かに海外に比べて日本のホテルやレストランなどのサービスの質は高い。

そこで今回は、なぜ日本では外国人が褒めるほど素晴らしいサービスが受けられるのか?その理由を考察してみた。日本のサービスと海外の違いを探ってみよう。

 

1. お客様が神様

「お客様は神様」という教育は日本以外の国ではあまり見られない。「外国ではお客と店員は対等で、日本のようにお客様が常に上という関係はない」と海外での接客経験がある日本人はよく言う。日本でサービス業に携わる人は決まって腰が低いが、お金を払うお客様が常に上の立場であると従業員がしっかりと理解しているからこそなせるサービスである。

ちなみに海外で日本のような“腰の低いサービス”を従業員に教育するのは難しそうだ。例えば、フランスのサービス産業従業員が愛想よくサービスをしない理由として「ニコニコしながら仕事をすると奴隷のように働かされていると誤解されると考えており、こうした誤解を避けるためだ」と説明している。アメリカでは、ニコニコとサービスする代わりにチップを請求してくるだろう。

 

2. お客様満足度で差別化競争

日本のホテル業界や外食産業などを観察して思うのは、日本では非常にライバル他社との競争が激しいということだ。日本は海外に比べて価格や商品の質が同じレベルの同業他社が多く、なかなか差別化が図りにくいように感じる。たくさんいるライバルからお客様に選ばれるためにどこの会社も競ってサービスの質を向上させようと躍起になる。「他のライバル社がサービスに力を入れるなら、わが社も負けていられない…」という意識が働き、業界全体のサービスの質が上がるという相乗効果を生む。日本のサービス業界はまさにこういった状況にあるのではないだろうか。日本のサービスは素晴らしいと言われる所以は、低価格のままお客様満足度を上げるという企業努力のたまものと言える。そして、そもそも海外に比べて人口過密度が高い日本では基本的に競争が生まれやすい環境なのかもしれない。

 

3. アイデンティティ<自分の役目

なぜ外国人は日本のサービスは素晴らしいと褒めるのか?海外との違い

海外ではお店の人もお客様も常に対等だ。なぜこの関係性が保たれるかというと、欧米社会ではお店の従業員も”あくまで個人”として扱われることを好み、自分のアイデンティティにプライドを持つ人が多いからではないか。欧米社会では会社の受付として働こうが、レストランのウェイトレスであろうが、まずは個人のアイデンティティが守られる。スミスさんはどこに行ってもスミスさんであり、社員であることは二の次だ。何よりも個人としてのアイデンティティを主張する。

この辺が日本人の場合は集団主義社会であるせいか、「集団のなかの一部」として抵抗なく受け入れる人が多い。個人の主張は二の次で、まずは”会社の顔”として対応することが立派な社会人として求められる条件のひとつだ。自分のアイデンティティは会社にいるときはとりあえず置いておき、会社での役目を全うするのが日本社会でのルール。サービスを与える側の役目を全うしようとする精神が日本のサービス業全般の評価につながっていると言える。日本では個人というアイデンティティが前に出てこないからこそ、振る舞いや話し方がよりプロフェッショナルな印象を与えている。

 

 

4. ”まずは仕事”という価値観

どんなに社会がサービス業向きであっても、仕事にやる気のない人ばかりでは話にならないが、日本人は一般的に諸外国に比べて“仕事”を真剣に捉えている人が多い。日本人は勤勉でまじめだというステレオタイプもあながち間違ってはおらず、サービス残業や土日出勤など海外にはあまりない風習も日本には多い。仕事が安定していないからという理由で結婚に踏み切れない男性も多く、日本人は何よりもまず”仕事”に重きを置く考え方が浸透しているように感じる。

また、最近では崩壊されてしまった「終身雇用制度」や「年功序列制度」などの日本独特な雇用制度も国民の「仕事に対する意識」に深く関係している。日本企業はとっくにこのような制度を採用しなくなったが、まだ国民の意識の中では「会社を変えること」、「転職すること」はマイナスだと感じてしまう人も少なくない。この辺が転職は自分のキャリアアップのため、と割り切って職を変える海外の人とは少し違うところだと思う。外国人は会社という”家族”の一員になるという意識はあまりなく、より良い待遇、給料を求めて職場を変えようという意識が強い。そのため、自分の働いている会社に対する愛着や愛社精神などはあまりない。海外の従業員は日本人に比べて、色んな意味で”身軽”である。これが日本のサービス業と海外の質の違いに繋がっているのではないだろうか。

 

5. コミュニティ社会

日本人が働き者だと言われる理由の一つに、日本のコミュニティ社会が関係しているのではないだろうか。協調性や場の空気を読む力などは日本で社会人としてうまくやっていくために必ず必要になる要素であり、日本社会では集団の中で和を乱さず、チーム全体でうまく働くことを重要視される。会社のなかだけに限らず、社会全体が「他人からどう思われるか?」を重要視するので、自然と自分も周りに合わせた行動をとろうとする。

仕事においては、各個人が「あの人よりも働いていないと思われたら嫌だ」、「みんなと同じくらいには働こう」と無意識に思い、結果的に職場全体、国全体が「働き者」になるのではないか。反対にチームとしてというより個人として活躍したいという意識が強い外国人は日本人ほど周りと合わせたり、周りの目を気にしたりはしない。

働き者コミュニティ日本で各個人が社会人としての責任を全うしようと努力した結果が、日本の世界一素晴らしいサービスに繋がっている。日本のサービス業というのは、そんな日本社会の厳しさを反映した努力の結晶のような気がしてならない。

 

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1コメント

  1. 「お客様は神様です」ってあの有名な言葉は、三波春夫は応援してくれるファンやお客様は神様のように有難いって意味で言ってたそうだけどね。
    決してお客様を神様のように扱えってことではなかったとかなんとか。