現在、調理師として働くYさん(28)は私立大学に一浪して入学。大学卒業後は一般企業のサラリーマンとして働き、25歳で「自分のしたいことは飲食業界だ」と気がついて、転職した。

都内の会社で一般事務として働くSさんは、大学卒業後アパレルメーカーの販売員として働きはじめ、転職した。

この話を外国人にすると、「大学まで行ったのに、なんて勿体無い進路を選ぶのか」と驚かれる。日本では高等教育の費用が高いことを説明するとなおさらだ。確かに、進路の行き着く先が調理師や販売員なら何も大学に行く必要はない。高校卒業後すぐに就職してその道でキャリアを磨いていくほうがよほど賢い。

お金だって馬鹿にならない。文部科学省の「平成26年度学生納付金調査」によると、国公立大学の入学から卒業までにかかる費用は平均約210万円。私立大文系で360万円、私立大理系で490万円だ。中学生からの塾代や模試代、参考書代なども加算すると、金額はさらに増える。浪人や留年をした場合も同様だ。

なぜここまで時間と費用を投資するのに、大学卒業後に販売員や調理師になる人がでてきてしまうのだろうか。

株式会社さんぽうによる「大学進学後の進路変更に関するアンケート」によると、大学生・短期大学生が考える「進路のミスマッチが後を絶たない原因」の第一位は「学生自身が希望分野、希望大学の内容をよく調べていない」で51.0%だった。

要するに、自分の進路についてあまり深く、とりあえず”進学”という道を選んだという人たちだ。自分の偏差値で行ける大学を選び、その先の進路はそのときになって考えればいいと思い、とりあえず進学を希望する学生たち。実を言うと筆者もこのタイプで、「自分のしたいことはわからないけど、とりあえず潰しのききそうな学部に行っておこう」という考えで、経済学部に入った。

「どんな職業につきたいのか?」という本質的な問題を後回しにし、人生の夏休みと言われる大学生活をエンジョイしていると、当然のことながら就職活動のときになって急に慌て始める。あと少しで社会に出なければならないという段になっても、何がしたいのか全くわからない…。

自分がどんな仕事に就けば良いのかわからないまま、周りの勢いに流されるように会社説明会に行く。何となく就活して、何となく行きたい会社が決まり、何となく採用される。大学を卒業して就職した人の3割が3年以内に会社を辞めていくと言われているが、この3割に入る社会人はこのような学生生活を送ってきたのではないかと思う。

就職して働き始めてからやっと真剣に「自分のしたいことは何だろう」と考え始めるから、こうなるのだ。本来なら大学在学期間中、いやもっといえば大学に入学する前の時点で将来の進路について悩んで、真剣に考えるべきである。就職活動中に考え始めても遅すぎるのだ。

しかし、すぐに離職してしまう新社会人ばかりを責められない。子どもの頃になりたかった職業に就いている人なんて少数派であるし、そもそも若者というのは、悩むもの。昨日はパイロットになりたいと思っていても、今日は消防士になりたいと思うかもしれない。あっちにしようか、それともこっちにするべきかと悩んで当たり前。幼すぎるから「やりたいことがわからない」というのも当然である。

やりたいことがコロコロと変わる若者が問題なのではなく、大切なのは国や社会、大人たちが若者の”悩める期間”をいかにサポートしてあげられるかであると思う。だが、現実問題として、日本の学生は一度大学まで進学してしまうとなかなか進路を変更できない。

 

原因は2つある。

1つは、大学での学習とキャリアプランが直結してないから。

国際研究組織と日本労働研究機構が行った調査によれば、日本の大卒者はヨーロッパの大卒者に比べて、在学中の学習と直結していない就業経験者が多い

筆者は”潰しが効きそうだ”という単純な理由で経済学部を選んだが、実際に法学部でも商業学部でもある程度の潰しが効いてしまう。日本では大学の学部とキャリアが別物であるから、真剣に学部を選ぶ必要がなく、入学後も進路を変更する必要もない。だから就活の時期まで将来のことは何も考えずに学生生活を送ることができる。

日本の高等教育の専門的知識の伝達が不十分であるせいで、日本の学生は「進路」について真剣に考える機会を奪われているといってもいい。

2つめは、高等教育機関の重い学費負担である。

ヨーロッパの学生は文学部から法学部に学部変更したり、途中で軍隊へ入隊したり、学士号をとった後にMBAを付与するビジネススクールに通うなど様々である。30歳になってやっと卒業するという人も少なくない。

なぜこんなことができるのか?それは、大学の費用がほぼ無料だからである。OECDの調査によると、日本は教育に対する公共支出比率が低く、特に高等教育では29か国中最低である。対して大学費用が完全に無料な国はオランダ、イタリア、ポルトガル。年間12万円以下の国がスペイン、フランス、ドイツ、ベルギーなどであり、国公立大学で50万円の授業料を払う日本とは桁が違う。

さらに国からの子育て支援も進んでいるので、家計の教育費負担は日本に比べるとかなり軽い。家計の負担が少ないことがわかっているからこそ、ヨーロッパの若者は進路をじっくりと悩むことができ、向いていないとわかれば路線変更することも容易なのだ。

 

新卒社会人の離職率が高いのは、学生が社会に出るまでに「自分の将来を真剣に考えなくてはいけない状況」におかれることがなく、さらに社会が学生に「進路に迷う」ことを許していないことに起因しているように思う。

また、学生側も集団に流されるように「何となく大学進学」をして、周りの人がしているように行動すれば安心できるという”甘え”が根底にあるため、いつまでたっても”やりたいことがわからない”という状況に陥ってしまうのだ。

 

これが筆者の「学生の頃に知っておきたかったこと」だ。周りにあわせていれば良いというのは単なる幻想。自分の頭で考えることが大切だ。

 

 参照:(株)さんぽう調べ日本労働組合総連合会

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3 コメント

  1. 業務内容と専攻が一致しない上、「四年生大学の新規卒業見込み」という条件でないと正社員にはなれない。
    何らかの形でそうできなかった場合、暗黙に「死ね」と言っている。
    外国人の友人に話したら首を傾げていた。
    経営者の偏見でしょうね。
    日本社会の問題点に誰も疑問を抱かない。
    能力がある人は外国へ。

  2. 私自身大学卒業まで莫大な費用をかけてもらい好きな仕事に就くことが出来ましたがやはり日本の学費は高すぎると思います。フランス人のようにヨ-ロッパの中心に生きている人は我々日本人と違って視野の広さが全てのものの考え方や行動経済教育に現れるのでしょうね?とても魅力をかんじます。

  3. 高校からずっと英語などの語学に興味があって、大学も語学系の学部に進学しました。将来は語学が生かせる職に就きたいので、私の場合は大学の授業とキャリアが一応直結してはいます。ですが、大学4年間では時間が足りず、もう少し大学にいたいというのが本音です。国立ですが、年間50万は高いです。国が大学をポンポン作ったせいなんですかね。明治期のように帝大などの数校でよかったのに思います。狭い国土に何百校と玉石混交の大学がはびこっている。大卒、学士という肩書がほとんど価値を失っているこの現状はどうかと思います。