フランスは福祉国家と言われるだけあって、福祉制度は凄い。その分、税金が高いというからくりがあるのだが、ここフランスに住んでいると、「やっぱりフランスの福祉制度は充実しているなぁ」と改めて感心する場面がある。感心を通り越して、「これってちょっと手厚すぎるんじゃない?」と感じることも…。

そこで今回は、フランス在住6年目の筆者がフランスで暮らしていて感じた「ちょっとやりすぎなフランスの福祉制度」を紹介する。あなたはこれらの制度はやりすぎだと思うだろうか?

 

1. チケレストラン

甘やかしすぎ?フランスの福祉制度が想像以上に凄い件についてチケレストラン(以下:チケレス)とは、会社が社員に配布する「社外での食事や食料品の購入に使える全国共通の食事用金券」のことである。社内に社員食堂をもたない会社が配布するもので、各人の就業日数により1ヶ月に渡される枚数が計算される。1枚8ユーロ前後のチケレスが最も多く、パリ市内ではこれを2-3枚使ってランチをするサラリーマンが多い。

このチケレス、半分は自己負担なのだが、勤務日に使わなくてはいけないという決まりはなく、本人でなくても使え、さらにはスーパーやパン屋でも利用可能なので働くフランス人にとってはかなり有難い制度だ。有効期限は1年と長い。普段は自分で作ったお弁当で昼ごはんを済ませ、チケレスは週末のごほうびとして有名レストランで利用するという使い方をしている人もいる。

全ての会社で支給されるというわけではないが、余程小さな会社ではない限り支給され、さらにフランス全国ほとんどのレストランで使えるので、チケレスはフランスではかなりポピュラーである。フランス人がランチでお酒を飲んだり、ランチで1時間以上使えるのは、チケレスのおかげなのかもしれない。

 

2. 3時間勤務でも失業手当

甘やかしすぎ?フランスの福祉制度が想像以上に凄い件について

筆者はパリのレストランで、週4日3時間15分の勤務を15ヶ月していた。このレストランのオーナーが急死し、今年の5月から失業手当をもらっている。こんなに少ない勤務時間で失業手当が出ることも驚きだが、その制度にも驚きだ。

フランスでは2015年の2月から「ル・コントラ・ド・セキュリザション・プロフェッショネル(Le Contrat de Sécurisation Professionnelle :CSP)」という制度が始まった。直訳すると「職業安定契約」となるが、これは普段の給料の80%を失業手当として受け取りつつ、専門の機関で職業訓練を受けられるというもの。月に一度、コーチング会社のカウンセラーと面談し、就職に必要なスキルを身につけたり、履歴書の書き方や面接の練習を手伝ってくれる。この研修と失業手当ては1年間続くのだが、パートやアルバイト程度の勤務体制でも、ここまで手厚い支援を受けられるのはとても有難い。

フランスでは失業率が9%前後と日本の倍であり、度々問題視されるが、失業率の高さの裏にはこのような手厚い福祉制度があるのだ。日本ではパートやアルバイトでも失業手当がもらえるが、「1週間に20時間以上働き、更に31日以上働き続ける予定であること」が条件となっており、フランスに比べると厳しい。

 

3. ミュチュエルでブランド眼鏡をゲット

甘やかしすぎ?フランスの福祉制度が想像以上に凄い件について

ミュチュエルとは任意保険のことで、健康保険証で還付されない医療費をカバーするためのものである。会社などに勤めている人の場合、その会社がミュチュエルに団体加入しているので、フランス人はほぼ全員ミュチュエルに加入している。通常、従業員は強制加入で保険料は給与天引きとなるため、別途個人で加入する必要はない。家族もその保険に付帯できる場合が多い。(フランスニュースダイジェスト参照

ちなみに筆者も旦那のミュチュエルに付帯して加入しているが、これで眼鏡やコンタクトレンズまでカバーできて凄い。コンタクトレンズは212ユーロ(約3万円)支給してくれ、眼鏡はフレームが181ユーロ(2万5千円)、レンズが両目で303ユーロ(4万円)とかなり手厚い。これが1年ごとに支給されるのだ。これだけの額なら、ディオールやシャネル、グッチなどの高級ブランドの眼鏡も支払いをすることなく購入できる。フランスの眼鏡屋さんによっては、「1つ買ったらもう1つ好きな眼鏡が買える」というようなキャンペーンをしている会社も多いので、目の悪い人にとってはかなり嬉しい制度だ。

 

4. 留学生にも手当金

甘やかしすぎ?フランスの福祉制度が想像以上に凄い件についてフランス人の間でも「ここまでしてあげる必要はない!」という意見が多く、度々問題に挙げられるのがアロカシオン(手当金)。通称アロカは、最低限の生活を営むための援助制度であるが、これが生活に困っているフランス人だけでなく、フランスに来た外国人留学生にも支給されるので、目からウロコである。

「フランスに留学するくらいだから裕福な人が多いのでは?」というのが反対意見の大半だが、「優秀な人材を世界中から集めて、フランスの文化や技術の発展に貢献してほしい」という肯定的な意見もある。確かにフランスでアロカをもらいながら学生生活を送り、その後フランスの企業に就職し、税金をきちんと納め、フランスで結婚し、子どもを産んでくれたらフランスにとってはプラスに働いたといえるかもしれないが、ほとんどの場合は学生生活が終わったら帰国のパターンである。フランス人の税金から外国人留学生に投資し、フランスで知識を得た学生が帰国して、フランスではなく母国への文化発展に貢献する。フランス側からしてみれば、「外国人にタダでお金をあげているようなもの」なのかもしれない。

 

さいごに

「フランスの福祉制度は素晴らしい!」と言うと、良いこと尽くめのように錯覚してしまうが、実際はそう単純なものではない。福祉制度が充実している国は、「支払ってばかりの層」と「受け取ってばかりの層」を産む。当然だが、福祉を充実させるには良い面と悪い面があるので、要は国としてどんな政策をとるか?が問題なのである。

福祉制度が充実しているフランスでも、「国民全体で助け合うべき」という意見もあれば、「個人の生活を他の人が助けるのは間違っている」という意見もある。さて、日本に住むあなたはフランスの”ちょっとやりすぎ”にも思える福祉制度をどう思うだろうか。日本もフランスのように、今後は税金を上げて福祉を充実させるべきだと思いますか。

 

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  1. 高福祉ってのは一見良さそうですが、その支払ってばかりの層、特に富裕層にとってはデメリットの方が大きいからか、外国に移住する人も出てくるとは聞いた事がありますね。

    イギリスだと、子供手当だけで働かなくても高所得な家族がいることに批判が出た事もありますが、やりすぎると労働意欲の低下にもつながるように思います。その最たる例が中東の産油国や、かつてのナウル共和国かもしれません。後者のナウルは、かつては肥料の原料になるリン鉱石が豊富にあり、これのおかげで国民は働かなくても贅沢三昧な日々を送れたそうですが、リン鉱石が枯渇した後も国民が働かなくて悲惨な状況になったと聞いた事があります。

    日本だと、生活保護の支給額が最低賃金を上回る事が問題視されており、最低賃金の設定を生活保護の支給額以上にすればいいだけではと思いますが、中々そうならないのが奇妙な所です。