2016年、テロのターゲットになりやすい治安の悪い都市ランキング
8 Jan 2015 Reuters

2016年3月、ベルギーの首都・ブリュッセルで連続テロ事件が発生した。この事件を受けて、去年のパリ同時多発テロを連想した人も多いのではないだろうか。2016年もISISによるテロ事件が続くのではないか、というのが海外メディアの予想である。それでは、次には世界のどの都市が、テロリストのターゲットになるのだろうか。

そこで今回は英紙『Independent』より、2016年テロのターゲットになりやすい治安の悪い都市ランキングを紹介する。このランキングは、リスク分析会社Verisk Maplecroftによる世界1300の都市を調査対象とした分析を元にしたものである。Verisk Maplecroft社は、テロリストの攻撃リスクを避けるために銀行や保険会社にアドバイスすることを目的にこの調査を作成した。


※ このリスク分析は、2015年3月までの12か月間に、世界で起きたテロ事件の発生件数と、過去5年間の長期的テロ攻撃の発生件数を考慮して分析したランキングである。

22アテネ(ギリシャ)

アテネが23位にランクイン。理由としては、パリ同時多発テロ事件の首謀者で、事件後に当局の急襲作戦で死亡したアブデルハミド・アバウド容疑者が2015年初めにも、アテネを拠点にベルギーの警察を襲撃するテロを計画していたことが挙げられるだろう。

21パリ(フランス)

2015年1月のシャルリー・エブド新聞社襲撃事件、11月の同時多発テロを受け、現在でも警戒が続くパリがランクイン。通常なら、観光客が1年十多いパリだが、最近は観光地も閑散としており、現地の日系旅行会社も大きな打撃を受けている。

20ベルファスト(北アイルランド)

北アイルランドの首都・ベルファストが、ヨーロッパで最もテロリスト攻撃のターゲットになりやすい都市である。2013年11月にベルファストのショッピングモールの近くで爆弾が爆発したが、市民等の避難後に爆発したため、死傷者はなかった。同モールの地下駐車場入り口でも爆弾を積載した車両が発見された。また、12月にはベルファストの中心街でバックパックに入った小型爆弾が爆発した。爆破予告があったため、負傷者は出なかった。

19ドホーク(イラク)

イラクのドホーク県の都市。多くのクルド人が生活している北部のこの地区は、イラクのなかでは比較的治安がいい。しかし、外務省の海外安全ホームページでは、警戒レベル2の「不要不急の渡航はやめてください」に指定されている。

18サナア(イエメン)

イエメンの首都・サナアは、粘土で作った煉瓦造りの建物があり、アラブ文化が色濃く残っている文化都市だ。首都としては世界でも高地にあり、世界で最も増加率の高い首都の一つである。そんなイエメンでは,全土に対して「レベル4:退避してください。渡航は止めてください。(退避勧告)」との危険情報を発出している。

17アブジャ(ナイジェリア)

ナイジェリアの首都、アブジャ。アブジャ市内の治安は、比較的良いものの、強盗事件なども絶えないことから、車での移動が基本となる。外務省の警戒レベルは2「不要不急の渡航はやめてください」

16ジョス(ナイジェリア)

ジョスは、アフリカの中でも最も宗教的対立が根深い都市の一つである。2014年5月20日、繁華街で2つ、軍の施設付近で1つ、合計3個の爆弾が爆発し、少なくとも118人が死亡する事件があった。ボコ・ハラムによる犯行との疑いがある。

15カラチ(パキスタン)

世界有数のメガシティ、カラチ。パキスタン最大の都市と唯一の主要港としての地位にあるこの都市は、パキスタンの歳入のかなりの部分を占めている。カラチ市では,シーア派等宗教的少数派の宗教行事や礼拝所を標的とした事件が年間を通じて多発しているほか,カラチ市では外国人を狙ったテロも発生している。

14カルバラー(イラク)

イラク中部の都市で、イスラム教シーア派の聖地。フセイン政権では、シーア派のイラン人の入国が厳しく制限されていたが、イラク戦争でフセイン政権が崩壊した後は年間100万人の巡礼者が来るようになった。そのため治安情勢の懸念から外国人がほとんど来なくなったイラクの都市の中で経済が良くなった。外務省ではレベル4の「退避してください。渡航は止めてください。(退避勧告)」に指定している。

13モガディシュ(ソマリア)

ソマリア最大の都市、モガディシュ。ソマリアは全土が「レベル4:退避してください。渡航はやめてください。(退避勧告)」に指定されている。モガディシュにおいては引き続きテロ事件が多発している。ソマリアを訪問する外国政府機関等の車列を狙った自爆テロ,政府関係施設への襲撃,国連施設への爆破及び襲撃事件などがほとんどだ。外国人に対する殺傷事件,誘拐事件がソマリア全土で多い。

12カーブル(アフガニスタン)

アフガニスタンの首都、カーブル州の州都、カーブル。現在、数十年続いた戦災からの復興の途上にある。カブール市内は、治安部隊による厳重な警戒が続いているものの、タリバーンによる政府機関、治安部隊、外国軍及び一般の外国人を標的としたテロ攻撃等が頻繁に発生している。

最近では、外国人の多く集まるホテルやゲストハウス等において、外国人を標的とした襲撃事件が継続的に発生しているほか、最高裁判所、省庁及び国会といった政府中枢機関を標的とした事件も起きている。特に、ホテルやゲストハウスの襲撃事件では、事前に実行犯グループが宿泊していたケースや反政府武装勢力に内通している警備員が実行犯を手引きするケースが散見されており、カブール市内においては、外国人が身の安全を確保することが難しい状況にある。

アフガニスタンも、全土が警戒レベル「レベル4」である。

11カンダハール(アフガニスタン)

カーブルに次いで、アフガニスタン第2の都市であるカンダハール。アフガニスタンの他地域と同様に現在、戦災からの復興の途上にある。

しかし、誘拐、強盗、窃盗等も多く、特に外国人を標的とした誘拐は増加傾向にあり、外国人は、反政府武装勢力及び営利目的の犯罪者集団の両方から常に狙われていることに留意しなければならない。

アフガニスタンでは、タリバーン等の反政府武装勢力による駐留外国軍やアフガニスタン治安部隊、政府関係者等を標的としたテロ・襲撃等が依然として多発している。


10ジャララバード(アフガニスタン)

アフガニスタン東部の都市であり、人口も多いジャララバード。ジャララバード市を中心とするナンガルハール県は、アフガン国内で事件発生件数が常に上位に入る県である。

ジャララバード市においても、反政府武装勢力による治安部隊や政府機関等を標的とした自爆テロや襲撃事件が多発している。また、武装集団による民間人誘拐事案も発生しており、過去には、2008年8月、ジャララバード市近郊において、邦人NGO職員が誘拐・殺害される事件が発生した。

写真は、2015年4月18日の市内中心部にあるカブール銀行前で自爆テロ。治安要員及び民間人30人以上が死亡、80人以上が負傷した。ISILの関与が疑われている。

9ハスケル(パキスタン)

パキスタンのどの州に属さない、パキスタン国内北西部のアフガニスタン国境地帯(FATA)、トライバルエリアに属するハスケル地区。。テロ事件の多くは,アフガニスタンとの国境地帯やFATA,KP州を中心に,軍や警察等治安当局及びその関連施設等を標的として発生している。

なお,FATAでは,1947年の建国以来パキスタンの法律が適用されておらず,外国人旅行者に何か問題が生じた場合でも,パキスタン当局の迅速な対応は期待できない。また,パキスタンからのアフガニスタンへの入国も,同国の治安情勢が極めて不安定なため,厳に控えるべきだ。

8クエッタ(パキスタン)

アフガニスタンとの国境に近い谷に位置しているパキスタンの都市。クエッタ市では、シーア派等宗教的少数派の宗教行事や礼拝所を標的とした事件が年間を通じて多発しているほか,カラチ市では外国人を狙ったテロも発生している。

さらに,女性を実行犯とする自爆テロ等も発生しており,その手口が多様化していること,また,2014年6月にTTPが外国人投資家,多国籍企業,外国の航空会社に対してパキスタンでの商業活動を中止し撤退するよう警告するとともに,外国企業も攻撃の対象となる旨の声明を発出したことについても注意が必要である。

7ベンガジ(リビア)

リビアも国土全土にわたって、「レベル4:退避してください。渡航は止めてください。(退避勧告)」(継続)に指定されている。特に、リビア北東部に位置する主要な港湾都市・ベンガジでは、軍・治安関係者の暗殺事件が頻繁に発生しているほか、軍と民兵との衝突が頻発し、市民を含めた多数が犠牲になっている。病院や学校、商店前などでも爆発事件が頻発しており、ロケット弾による攻撃も相次いでいる。

2014年5月、ハフタル退役少将(当時)が、イスラム過激派組織の掃討作戦を開始し、現在も同人の率いる軍勢とイスラム過激派組織との間で激しい武力衝突が繰り広げられており、民間人も含む多数の死傷者が発生している。

6ペシャーワル(パキスタン)

パキスタンのカイバル・パクトゥンクワ州の州都である。また、連邦直轄部族地域(トライバルエリア、FATA)の行政上の中心地である。2014年12月16日にパキスタン・ターリバーン運動 (TTP) に所属する7人のテロリストがパキスタンのペシャーワルにある軍事学校に侵入し、学校の生徒や職員を襲撃した。

犠牲者は、8歳から18歳までの子供132人と、学校に残った職員9人を含む141人と報告されている。ヒッラ(イラク)また、少なくとも114人が怪我をして市内の病院へ収容され、950人以上の生徒、職員が軍によって救出された。この事件は、2007年カラチ爆弾テロ事件よりも多くの犠牲者を出すテロ事件となった。

5キルクーク(イラク)

イラク石油工業の中心都市、キルクーク。主にクルド人とトルクメン人が暮らす多民族都市として知られていたが、1980年代にサッダーム・フセインのアラブ化政策にともない、クルド人やトルクメン人は郊外の村々に強制的に移住させられ、都市の住民の大部分はスンナ派アラブ人の労働者となった。

2015年、イスラム国は装甲車等を含む大部隊でイラク北部の油田都市キルクークに侵攻し、クルド自治政府の治安部隊と激しい戦闘になった。キルクークがイスラム国の本格的な攻撃を受けたのは初めてとみられる。クルド自治政府当局者は簡易投稿サイト「ツイッター」で、イスラム国の戦闘員45人とクルド自治政府の兵士7人の計52人が死亡したと伝えた。

4バアクーバ(イラク)

 イラクの首都バグダードから、そう遠くない北東に位置する都市だ。もちろん、ここも外務省ではレベル4の退避勧告を出している。

イラクでは、ISIL(イラク・レバントのイスラム国)との戦闘、テロ、一般犯罪、部族間抗争、デモ・抗議行動、トルコによるPKK(クルディスタン労働者党)拠点への攻撃、自然災害等の脅威が混在している。

イラク国内の治安情勢は、周辺諸国等の動向等に影響されやすく、比較的安定している地域においても、今後、急速に悪化する可能性があり、十分な警戒が必要である。

3ラマーディー(イラク)

2011年より始まった米軍の撤収に伴い、ラマディはイラク政府と過激派組織ISILとの間で争われてきた。

イラク北部及び西部では2014年6月以降、ISILとの戦闘が続いていたが、イラク軍等による「連合(コアリション)」はISILの拠点や活動地域に対する攻撃を開始。同年5月には、ISILがラマーディ及びファッルージャを占拠した。し同年12月、イラク首相府は、イラク軍がラマーディを制圧した旨発表した。

2モースル(イラク)

モースルはイラク北部、古代のニネヴェの遺跡と世界有数の石油生産で知られる大都市である。バグダードの396km北西に位置する。

2014年6月9日、ISILがモスルの政府施設などに攻撃を仕掛け占拠。警察署も放火され機能を失い、街全体が武装勢力側に掌握された。

2015年2月18日、イラクのハキム国連大使は、ISILが殺害された民間人の体から臓器を取り出し、資金づくりのため密売している疑いがあると指摘。モースルでは、遺体から臓器を摘出することを断った医師12人が殺害された、との情報もあると話した。

2015年2月、モースルの美術館にある7世紀ニネヴェ (メソポタミア)の石像などがIS兵士たちに破壊された。2016年3月25日、イラク政府はモースルの奪回作戦を開始。

このようにモースルでは、ISILによる侵略と治安が安定しない情勢にあるため、これらの地域への渡航は、目的のいかんを問わず止めるよう警告している。

1バグダッド(イラク)

やはり、イラクの首都で同国最大の都市が最もテロに遭いやすい都市となった。2003年3月のイラク戦争でアメリカ合衆国・イギリス両国を主力とする軍の攻撃を受けたバグダッド。2011年12月、オバマ大統領は公約通り全部隊のイラクからの撤退を完了させた。しかし、現実には治安は決して回復しておらず、連日、大規模なテロや爆破がつづいている。

バグダッドでは、2015年8月以降、反腐敗や公共サービス改善等を求めるデモ・抗議行動が金曜日を中心に続いている。また、バグダット等ISILとの戦闘地域以外でも政府機関、治安機関、宗教関連施設、民間人等に対するテロ等が発生している。

イラクでは、過去に複数の日本人がテロや誘拐の被害に遭っている(2003年11月のティクリート近郊での外交官殺害事件、2004年4月のファッルージャ近郊での日本人人質事件2件、同年5月のバグダッド郊外での日本人ジャーナリスト襲撃・殺害事件、同年10月の日本人旅行者人質・殺害事件、2005年5月の日本人襲撃事件)。

2006年以降は、イラク国内で日本人が標的となる事件は発生していないが、2015年2月にはISILが隣国シリアで行方不明になっていた日本人2人を殺害する映像を配信し、同組織の機関誌において日本を標的とすると言及している。ISILとの戦闘が続いているイラクにおいて日本人がテロ・誘拐事件の標的となる可能性は排除できない。

参照:Independent(英語)外務省


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