誰も語らない日本人の摂食障害、なぜ今患者が急増しているのか
写真:Flicker - Sebastian R.

日本人って病的に痩せた人が多いよね。

7年前、日本に留学していたフランス人の旦那は言った。それを聞いた当時は、「確かに日本人は肥満が少ないかもね」ぐらいの認識だったが、フランスで生活するようになって、彼の言う“病的”の意味がわかるようになった。日本では一目で、「この人摂食障害だ」とわかる人がフランスより多い。拒食症でガリガリに痩せてしまっている女性を目にすることも、日本ではそれほど珍しいことではない。そして、驚くべきことに「拒食症」でインターネット検索をすると、「拒食症になりたい」や「拒食症になる方法」で検索をしている人が非常に多いことがわかる。

 

先月の日本経済新聞の記事によると、拒食症や過食症などの摂食障害で治療を受けている患者が、現在全国に推計2万6千人いる。うち約9割にあたる2万3000人が女性。。国による大規模調査は1998年以来で、当時から約1割増えた。症状別の内訳では、最も多いのは極端に食事の量を減らす拒食症で、女性約1万1580人、男性約620人だった。過食症では、食べたり吐いたりを繰り返すタイプが、ひたすら食べるタイプを上回った。

調査では、全国の保健所3071カ所を対象に、摂食障害に関する相談の状況も聞いた。

本人や家族からの相談で、実際に医療機関で受診しているのは39.6%。治療を途中でやめたり、治療を受けていない人が43.0%いた。管轄内に摂食障害の治療機関があっても、「相談しにくい」と考える保健所も多かった。調査を実施した国立精神・神経医療研究センター(東京都小平市)の安藤哲也室長は「医療機関を受診しない人も多い。実際にはもっと多くの患者がいる」とみている。

 

東京都在住37歳のAkiraさんは、11歳の頃から摂食障害に悩まされている。彼女はこう語る。

「過食症はとてもよくあることなんです。でも日本人は、あまり精神疾患について関心がありません。みんな語りたがらないんです。」

彼女が言うように、日本にはこの問題を抱える人が語り合える場があまりない。その理由は、日本特有の文化にあるとHanuさん(23)は言う。彼女は高校生の頃から、食べたり吐いたりを繰り返す拒食症に悩まされていた。何年にもわたって、精神科医による面談を行ってきたが、具体的な治療は施されなかったらしい。彼女はその理由を、日本には摂食障害や精神障害を“恥”だとする風潮があるからだと語る。

Hanuさんが摂食障害になったのは、体型を気にしていたからではない。

「摂食障害が始まったころ、私にとって食べることは、唯一満足感を得られる行為でした。日本人は子どもにもハグやキスをしないし、家族や夫婦でもこういうスキンシップはありません。思うに、私が幼いころに摂食障害になったのは、食べることで安心感を満たしていたからだと思います。」

エリさん(45)は、生活のプレッシャーに耐えるために過食が始まったが、しばらくすると、食べること自体がストレスになったという。エリさんも、Hanuさんも、食べ残すことに対して罪悪感を抱いていた。エリさんは言う。

「おそらく、国民は飢餓状態なのに 大日本帝国陸軍へ食料を供給していた第一次世界大戦のあたりから“もったいない”が始まったんだと思います。私の母は、食べ物を捨てられませんでした。冷凍庫を開けると、なかからたくさんの冷凍した食べ物がドサドサッと落ちてくるんです。米粒の最後の一粒まで食べないと罪悪感を感じてしまい、食べることがプレッシャーだったのを覚えています。学校では、乳糖不耐性の子はいつも牛乳を吐いていました。」

しかし、日本における“痩せなくてはいけないプレッシャー”が高いことは言うまでもない。精神保健指定医の井口俊大先生によると、摂食障害には大きく分けて4つの原因がある。

誰も語らない日本人の摂食障害、なぜ今患者が急増しているのか
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社会的要因

現代日本は、痩せた人をもてはやし、肥満を極端に嫌う傾向がある。厚生労働省によると、20歳代の女性の平均体重は年々減ってきており、標準体重よりも10%近く少ない数値になっている。こういった社会状況が、摂食障害の患者さんが増えている原因の一つだといえる。

心理的要因

上記のように、若い世代では特に「痩せていると良い」とみられる傾向が強くなっている。痩せた体重や体型で、自分の価値を見出そうとしてしまう。

さらに、拒食症では強迫性パーソナリティ傾向(自分の決めたルールからずれるのが我慢できない拘りの強い性格)が、また過食症ではうつ病や不安などが、それぞれ発症の原因と関連している。自己評価の低さや、自尊心の低さも摂食障害の原因となることがある。

家族環境

家族との接触が少ない・反対に家族が過保護や過干渉である時に、摂食障害が起こる確率が高くなる。また、家族や周囲の人のダイエットや、食事や体型について批判的なコメントを受けることも、発症に関係していると考えられている。

遺伝的要因

上の3つの要因に加えて、発症に大きく関係していると考えられているのが遺伝的な要因。拒食症と過食症とで罹患感受性遺伝子(病気へのかかりやすさに関わる遺伝子)はそれぞれ異なるが、全く違うものというわけではなく、オーバーラップした部分もあると考えられている。

 

このようなストレスが主な原因で、摂食障害になる人が増えているのだ。そして、その摂食障害の治療の第一歩は、患者本人がまず自分で「私は摂食障害だ」と認めることから始まる。しかし、これも日本では難しいのではないかと日本在住歴4年のアメリカ人で、カリフォルニア州立大学 教授Nancy Snowは語る。

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「自分の弱みを認めるような場所ではないんですよ。しかも、日本人の多くは摂食障害は日本文化に原因があるとは思っていないんです。どこか外国から来たものだと思っている人が多いです。」

摂食障害(拒食症)というと、海外の痩せすぎスーパーモデルのイメージが強いせいか、あまり日本人とリンクさせては考えない。しかし、実際に日本では摂食障害とまではいかなくても、「不健康に痩せすぎな女性」も多い。摂食障害患者の数が増えている現在、この問題に見て見ぬふりをし続けるわけにはいかないだろう。

フランス人の友人(女性)はテレビでAKB48を見て、「この子たちは拒食症集団なの?」と言ったが、それだけ欧米人から見ると日本の芸能人は痩せすぎなのかもしれない。そんな痩せすぎ芸能人が美の基準であるかのように伝え、一般人が真似しようとするから、拒食症になってしまう女性が後を絶たないのである。

グラビアアイドルやアニメのキャラクターに見られるような、「痩せているほど美しい」という一方的な植え付けは控え、もう少しこの問題について考えるようにテレビやマスコミが情報を流していくべきではないだろうか。日本摂食障害学会(JSED)、心療内科特任診療部長石川俊男によると、多くの患者は病院を訪れた時点ではすでに手遅れで、病態は深刻だと言う。死のギリギリ直前で、病院にやってくる患者も多いそうだ。

高校生の頃から、摂食障害に悩まされてきたHanuさんは言う。

「日本人みんなが繊細というわけではありません。しかし、繊細な人がこの国で生まれてしまったら、問題です。私が小さいころは、人生は地獄のようだと思っていました。親からの勉強しなさいというプレッシャーがひどかったんです。

子どもが自殺をしたとき、親は“この子は何の問題もなかった、学校でも楽しそうにしていた”と言うんです。わが子が死ぬまで、問題には気がつかないのですよ。」

 

参照:日本経済新聞いしゃまちThe guardian

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3 コメント

  1. 精神的な理由のほかに食事を摂らなければ痩せられるという安易なダイエット法が広まっているのも問題な気がします。バランスのよい適度な食事と運動がダイエットにも健康にもいいのに、横着して食べない、吐くとかいう手段をとるバカが多すぎる。

  2. 私も留学生から凄く痩せてるけど病気なの?と言われたことがあります。でも体質的に太りにくい所謂、痩せの大食いですヽ(;´Д`)ノ
    お昼ご飯一緒に食べてたけど、その留学生はいつも菓子パンとかサンドイッチで済ませてたのに対して、私は必ずがっつり系の定食w
    旦那さんや友人さんが街で私を見かけたら即行、拒食症だと見なされるでしょうね。でもこういうタイプ結構いると思いますよ。
    いつだったかNHKで拒食症の患者さんが出演されてましたけど彼女は「見た目」標準体型なのに、過食嘔吐が止められないと言ってました。
    子供じみたこと書きたくないですが、人を外見で判断するのは何だかなーって思います。だいたい「日本人は~」って日本人全員知っとんのかい!なんて(ゴメンナサイ)。
    そもそも「病的にやせてる」って何なんでしょ?それって見てる人のさじ加減ひとつなんじゃないでしょうか?医者じゃない素人なら尚更。
    AKBを見て可愛いと思ってたり、グラビアアイドルやアニメキャラ見てそういう体型に願望抱いてるのって拒食症傾向強い女性より、「女は華奢で当然」と思ってる男性の方が多いんじゃないですか?まあ、そういう男性に相手されたくて痩せたいと思う人も多いでしょうが…
    痩せているから美しいって考えてる人は古いと思います。それと同時に、痩せていから美しいと考えている人が多いっていう考えを持つ人も古いと思います。

  3. >現代日本は、痩せた人をもてはやし、肥満を極端に嫌う傾向がある。
    これは否定はしませんが、日本はアジアの中だと比較的太ってる人に寛容な方みたいです。日本よりも小柄で骨格も華奢な人が多い東南アジアに行くと、日本では太ってるとは言われない人がデブ扱いになる事もあるようです。欧米人から見ると日本の芸能人は痩せすぎって話ですが、人種や民族によって骨格なども異なってくるので、単純に欧米人から見て痩せてるからと言って、実際にその人が痩せてるとも言い切れません。逆に、アジアがそれだけ太った女性に厳しいとも言えそうですが。
    話は変わりますが、家族でたまに行くバイキングレストランでは、常連らしい女性が1人で来ているのを見かける事がありますが、心配になる位痩せています。しかし、食べる量は尋常じゃなく多いです。食べた後に吐いてる可能性もありますが、ギャル曽根のように食べても太らない体質の可能性もあります。日本人は小食な人も多い反面、世界トップレベルの大食いが何人もいるなど、極端な民族に思います。