これでいいのか?日本人のしつけ|日本の子育てと欧米の違い
写真:Flicker - tenaciousme

先週、置き去り行方不明の男児が無事に保護された事件を受けて、海外では「虐待ではないか」という厳しい批判をするメディアが多かった。このブログでも、「悪いことをすると家族という集団に入れない」というしつけの仕方と、日本人がもつ「仲間はずれにされる恐怖心」の関係性を分析してみたが(記事)、他にも日本人特有のしつけの仕方はあるのだろうか。

そこで今回は、アメリカと日本を行き来する生活をしているブロガーBrian O’Sullivanさんが考察した、「日本人のしつけと欧米の違い」を紹介する。彼の考察は客観的で深く、的を得ていて面白い。あなたは日本人のしつけについて、どう思うだろうか。

Japanese Parenting Style – And Differences from the West(日本人の子育ての仕方、欧米との違い)

日本を訪れた駐在員や外国人は、日本の子どもの振る舞いを見て、しばしば驚く。

日本人の子どもは騒がしくなく、大人っぽくて、自己充足的。欧米人は自国の子どもに比べるとき、日本人の子どもに対してこのような印象を持つ。なぜ日本人の子どもはお利口なのか。

日本在住外国人はそれぞれに理由を説明する。「日本人の子育てが厳しいから。」、「日本は治安がいいので、小さいうちから自立した行動を教えるチャンスがあるのよ。」、「日本人は欧米人より、子どもを子ども扱いしないわ。」…e.t.c.

子どもの成長は複雑で、文化や子どもの気質、母親の性格など、多くのファクターに影響を受けているのは言うまでもない。だからこそ、子育てに対する質問は後を絶たないのである。

 

日本人の典型的な子育てスタイルってなに?

ドイツの発達心理学者ハイジ・ケラーによると、子育てスタイルは大きく2つに分けられる。「近位」と「遠位」だ。簡単に言うと、近位的子育て法とは、母と子の一環した長期にわたるボディーコンタクトがある子育て法だ。対する遠位的子育て法は、アイコンタクトや顔の表情、言葉に重きを置いたものである。

日本では、近位的子育て法が一般的。川の字になって親子が一緒に寝る、一緒にお風呂に入るなど、欧米ではあまり見られない母と子の体の触れ合いが日本では標準である。

日本人の母親は、子どもが求めているものを先回りして読むのが得意だ。なかでも、騒ぎを起こす前に予想することは優先事項である。さらに、日本の母親は子どもと一緒にいる時間が欧米人より長い。子どもが2歳になるではほぼ毎日四六時中一緒にいることが多い。ある調査によると、日本人が赤ん坊と一緒にいない時間は、週に平均で2時間程度。アメリカ人は約24時間なので、差は歴然としている。

日本人は、ベビーシッターや祖父母に子どもを預けて、夫婦で映画を観に行ったり、夫婦だけで旅行に行くようなことはしない。日本の文化では、これはあまり良いようには思われないからだ。日本で責任感のある母親として認められたいのなら、子どもが生まれてからの最初の2年間は(最低でも)、付きっきりになってあげなくてはいけない(しかし、現状は変わりつつあり、以前に比べてワーキングマザーは増加傾向にある)

欧米人からの視点だと、日本の子育ての仕方は「甘やかしている」ように映るかもしれない。欧米では、一般的に母親が子どもに自立していくよう働きかける。欧米では、生まれて間もないころに母親に依存している赤ん坊を、少しずつ自立させていく必要があると考えるからだ。子どもの自立を助ける一つの方法に、子どもの自己表現を評価し、伸ばすという方法がある。欧米人の母親は、子どもが騒がしくするのを認めてあげることこそが、自己表現と自己主張という極めて重要なスキルを伸ばすのために必要だと考えている。子どもが騒ぐのをやめさせたいと思う衝動は、とても大切な教訓を学ぶ機会を子どもから奪うことにつながるのである。

対する日本人の母親は、子どもが赤ん坊のうちは、子どもを家族とは離れた存在と捉える傾向にある。赤ちゃんは母親への完全な依存が必要と考えるのだ。結果として、母親と子どもの関係は2つの心を融合したようなものになる。母と子の境界が曖昧になり、子どもの求めることが母親の求めることになる。その逆もまたしかりだ。

 

日本人の子育てでは、どんな大人に育つのか?

典型的な日本人の子育て法(近位的子育て法)の結果がどうなるのかを理解するには、まず自己制御性を理解することが重要だ。自己制御性とは、自分の感情や行動、思考や注意などをコントロールし、モニターできる能力をさす。ここに、子どもの自己制御性をテストした面白い実験がある。マシュマロテストだ。

↓ 子どもたちは「目の前のマシュマロをすぐに食べてもいいけど、戻ってくるまで食べないでいたら、後でもう一つあげるよ」と言われる。その後、マシュマロを食べるのを我慢する(自己制御)子どもたちの反応がかわいい。

自己制御は様々な場面で見られる。例えば、親の言うことを聞く力や、自立して感情的な悲痛から立ち直れる力、しなくてはいけないことを最後までやり通す力、失敗した後の行動力などである。

日本人の子どもの自己制御力を観察するのに参考になるビデオがある。放送開始から25年以上続いている長寿番組『はじめてのおつかい』だ。

これに登場する子どもたちは本当に小さいが(実際に日本でもこれほど小さい子供が子どもだけで出歩いているのを目撃することはまれである)、兄弟が協力し合って、はじめてのおつかいを果たしている様子が分かる。 

 

自己制御力と自己認識力

ハイジ・ケラーは、日本の子育て法である近位的子育て法と、幼児期の自己制御力にはっきりとした相関関係があると説いている。つまり、一般的に日本の子どもたちは欧米の子どもに比べ、自己制御力という点で優れているのだ。反対に、欧米的子育ての遠位的子育て法は、幼児期の自己認識力を伸ばす子育て法である。

自己認識力とは何だろうか。自己認識力とは、自分の考えや感情は、他人とは違うことを理解する能力である。

↓子どもの自己認識力をテストした実験、ミラーテストの様子。額に赤いマークをつけた子どものが鏡を見て、自分だと認識できるかをテストしている。18か月以下の子どもは自己認識できていないが、それ以降の子どもは鏡の人間を自分だと理解している。

欧米人の子どもは、自己制御力という観点では日本人の子どもに劣るが、環境の中で自分も役者なのだと認識するのが早いのだ。自分がいる環境に影響を与え、コントロールする力があることを早い時期から認識し始めるのである。「僕が泣いたから、お菓子をくれた」、「私が駄々をこねたから、ママが元気づけてくれた」など、自分の行動によって、どのように周りが動き、どのような影響を与えるのかを理解する能力に長けているのである。

このようにして欧米人の赤ちゃんは、少しずつ自己主張と自己表現方法を学んでいき、環境のマスターとして成長していく(自己認識力)のである。

対する日本人の赤ちゃんは、一貫した経験を積んでいく。それは、「ママはいつもそばにいてくれる。私が泣いても泣かなくても、ママがいつも私の必要なものをわかってくれる」という経験だ。これを通して、日本人の子どもは自分の感情を制御し、母親が必要なものを持ってくるまで待つ(自己制御力)人になるのだ。

日本で子育てをしている欧米人はよく「日本人の子どもは大人しくて従順だ」と言うが、その理由は、日本の子育てが近位的であり、欧米の子育てが遠位的であるという両者の子育て方法の違いで説明できるのだ。しかし、両者の面白い違いはこれだけではない。

 

共感力の重要性

集団主義社会で、集団のハーモニーを重要視する日本の社会では、自分の行動が他人にどういう影響を与えるかを理解しておくことが何よりも重要である。よって、共感する力が日本文化の中核となっているが、これは親がするしつけでも同じである。対する欧米人は相手の気持ちを察することよりも、命令に応じるコンプライアンスを重要視する(言葉による命令や罰を与える)。

日本の母親は、子どもに自分がしたことが人にどんな影響を与えるかを絶えずフィードバックして教える。相手が人だけでなく物であっても同じで、「そんなに乱暴に扱ったら鉛筆がかわいそうでしょう」という言い方をする親がいるが、これはあまり欧米では見られない。このようにして、日本の子どもたちは幼いうちから、行動する前に相手の気持ちを思いやる重要性を教え込まれるのだ。

 

日本でのしつけとは

日本はどちらかというと厳しい文化だと捉えられるので、多くの外国人が日本の家庭でのしつけは厳しいのではないかと予想するが、これは必ずしもそうではない。欧米人の親がルールを守ることや罰の一貫性を重要視するのに対して、日本人の親はルールを曲げることも状況によってはあるし、罰を与えることをあまりしない。

その代わりに、日本人の子どもは小さなコミュニティー(学校、部活、塾など)に入れられ、そこで協調性や協力の仕方などを学んでいく。このようなコミュニティーからの社会のプレッシャーが、ルールの執行者となり、間接的にコンプライアンスを求め、子どもたちに適切な行動と従順性を教えるのだ。

 

 

まとめ

以上が、Brian O’Sullivanさんが分析する「日本人と欧米人の子育ての違い」である。彼は最後に、これはあくまで一般論であり、全ての人に当てはまるわけではなく、欧米と日本の子育てのどちらかに優劣をつけるべきではないとまとめている。

確かに、日本の子育て法は日本社会に適した人間を育てるためのものであり、単純に欧米流の子育て法を取り入れたところで、ちぐはぐになってしまうだろう。

日本社会にきちんと適応できる、自己制御力を伸ばしていくか。
グローバル化にも対応できる、自己認識力を伸ばしていくか。

親の悩みは尽きない、というのは世界共通である。

参照:Brian O’Sullivan

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1コメント

  1. 先日ヨーロッパの子達と触れ合う機会があり、天真爛漫のいう事を聞かない様子、またその子達の親の対応を見て何故こんなに日本の子とは違うんだろう?子供が周りに(主に私に 汗)被害を出ているのに注意もせず騒がせているのに自分たちはお酒を片手におしゃべりしていてとても不思議に感じていたところでした。
    この記事を読んでとっても納得…というか謎が解けてすっきりしました!
    確かに言う事は聞かないけど自分から色々アピールしてきたり、甘え上手というかこうすればこうしてくれるという流れをちゃんと把握していましたし、10歳くらいの子は自己制御も出来る様で本当にしっかりとしていて驚きました。
    親は時々注意しに来るけど途中では介入せず最後に現れてどうしてこうなったのかを子供に言わせる感じです。

    親の認識や立ち位置によってこんなにも変わってくるものなんですね。
    近い将来子供が欲しいと考えていたので本当にいい勉強になりました!