英語に苦手意識があるフランス人と、日本人の意外な共通点
写真:Flicker - Giuseppe Milo

フランス人はステレオタイプで言われているように、英語が苦手な人が多い。

もちろん、日本人や中国人などのアジア人と比べると、言語体系が似ているフランス人のほうが英語力は高い。しかし、教育レベルが同程度のヨーロッパの国と比べてみれば、差は歴然だ。


「英語が苦手」で有名なフランス人と、日本人の意外な共通点
欧州連合国の英語能力  EU survey

フランス人はフランス語に誇りを持っているから、英語を話したがらない…という通説もあるが、実際は違うだろう。もちろん、そういうケースもあるだろうし、実際にフランス人にフランスの好きなところは何かと尋ねてみると、「美しい言語」と答える人も少なくない。

しかし、フランス人が英語を話したくない本当の理由は、「英語に苦手意識がある」からだと思う。実際、フランス人と話していると、「私(僕)は英語ができないから…」と控えめに話す人が珍しくない。いつもなら理路整然と自己主張をするフランス人が、英語となると急におとなしくなるから不思議だ。この反応は、「英語が苦手なんで…」という前置きを欠かさない日本人の態度とよく似ている。

さらに、特筆すべきは、フランス人のなかには英語を理解できるのに、「あえて使わない」人が一定数いることだ。こういう人は、グループの中でフランス語が理解できない人がいても、お構いなしにフランス語で話し続ける。なぜ英語で話さないのかと尋ねてみると、恥ずかしそうにこう言うのだ。

だって、英語話すと恰好悪く聞こえるから

以前、「日本人から見たフランス人の性格の特徴、ここが面倒くさい!6つ」という記事の中でも書いたが、フランス人は格好つけたがる国民性だと、常々思っている。フランス人は、「お高くとまっている」とか、「保守的だ」と言われるが、その背景にはフランス人の「馬鹿だと思われたくない恐れ」のようなものがあるような気がするのだ。

ダンスやカラオケ、スポーツなどでも、フランス人は難しそうなものや不得意なものには最初からやろうとしない。特に、道化師のようにボケをとって、周りから笑われるのを極端に嫌がる。その点、新入社員時代から一発芸を披露している日本人は、モノマネや一発ギャグをして笑いをとることに、あまり抵抗感を抱いていないように感じる。


フランス人は、恰好悪いと思われたくないから、自信のない英語を話すのを嫌がるのだ。フランス語なら難なく話せるし、うまく発音できるかどうかなんて心配もしなくていい。コミュニケーションをとることよりも、自分が格好悪く映らないために、英語ではなくフランス語を押し通す。フランス人は英語が苦手だというイメージを持たれる理由が、ここにある。

それでは、日本人が英語に苦手意識があるのはなぜだろうか?それは、「間違えてはいけない」という恐れがあるからではないかと思う。受験英語で厳しく採点され続けてきた私たち日本人は、無意識のうちに、英語は努力して正確に身に着けないといけないものだという刷り込みが出来上がっている。

間違えを恐れる日本人にとって、英語はコミュニケーションツールではなく、○か×かの2択だ。少しでも間違えてしまったら、まるで落第者かのように、ひどい恥をかかされたと感じてしまう。だから、最初から話してみようともせず、「私は英語が苦手なんで…」と断りと入れて、そそくさと逃げる。

フランス人も日本人も、実際に挑戦してみればそれなりに英語が話せるのに、最初からそれをやろうとしない。両者の共通点は何か。

それはズバリ、「自意識の高さ」だ。

フランス人も日本人も、とーっても自意識過剰なのである。実際には、格好悪いと思われたくないとか、間違えて恥ずかしい思いをしたくないなんて考えているのは本人だけで、相手の人はそんなことを想像すらしていない場合も多い。片言な英語を話す人でも、身振り手振りで一生懸命話してくれたら、相手は嬉しくて「あいつの英語は酷い」なんて判断を下すことはないと思う。

コミュニケーションは時として、言葉よりも表情や仕草が、その人の気持ちを物語っていることがある。そして、外国人との会話という”非日常”では、互いに言葉以外の情報にいつも以上に注意を払っている

だから、あなたが誠心誠意を込めて話したなら、いくら英語がつたなくても、気持ちがまず相手に伝わるだろう。気持ちが伝われば、心がつながる。逆に言えば、いくら完璧な英語が話せたところで、そこに「伝えたい」という気持ちが込められていなければ、相手の心には響かないだろう。

要するに大切なことは、発音がどうとか、文法がどうというのではなく、自分の自意識を捨てられるかどうか。

もっと言えば、自分のことを後回しにして、相手のために動けるか、である。

もちろん英語だって知識が必要なので、気持ちを込めれば全てうまくいくという甘いものではない。しかし、完璧に話せないからといって、早々に辞退する高尚な自意識を持っている人は、そんなつもりはなくても

あんたより、私のほうが大切なの

というメッセージを、相手に送ってしまっていることに、気が付いたほうがいいだろう。

 


3 コメント

  1. 逆パターンを書きます。フランス人、文法や単語が間違っていても英語話せることがカッコいいとおもっている&見せたいのではなしたがる(おもに男性)。
    日本人は、自分はまだまだ英語力が完璧じゃないので、下手なのでとひたすら完璧を目指す。

    でもどちらも自意識過剰ってその通りだと思いました。とりあえず困っている人がいたら知っている単語でもいいから出してあげるとけっこう通じます。

    >あんたより、私のほうが大切なの
    というメッセージを、相手に送ってしまっていることに、気が付いたほうがいいだろう。 完全に同意。

  2. 自意識の高さかぁ。それもあるかも知れないが私はそれが第一義的理由だとは全然思わない。それより英米の文化、価値観が自分たちのものより美しいとか、憧れたりしないからだと思う。言葉にしろ、料理にしろ、芸術にしろ、ライフスタイルにしろ何でも。ロシアも英語が苦手な国で有名だけど彼らも同じ理由だと思う。裕福さでは英米の方が上だけど、文化や価値観は自分たちの方が素晴らしいと間違いなく思っているはず。

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