シリーズで書き続けた国際ラブストーリーも、とうとうプロポーズの回になりました。最初に言っておきます。この回は自分でも書いててちょっと恥ずかしくなるような、完全なるノロケ話です。

東京研修から同棲中の福岡のアパートに帰った私。部屋にある机の引き出しを何気なく開けた。そこに決して見てはいけないものがあった。翌日貰うはずの婚約指輪がひっそりとそこにあった。


やべぇ!見ちゃった!!私は小さいころから変な観察力のようなものがあって、自分が家にいない間にどんな郵便物が届いたかとか、冷蔵庫に何が増えたか、どんな物が動いたかなど家の中の変化に気がつくのが早い。家族に感心されるほどだった。でも、今回は本当に見てはいけないものを見つけてしまった。でも幸運なことに彼は気づいていない。見ていないことにしなくちゃ。この指輪は明日、初めて見るはずのものだ。

翌日は休みだった。さわやかな春の朝。慣れない研修の疲れから、ぐっすり寝ていた私。眠りのなかで彼の声が聞こえた。
「リリー起きて!朝だよ!」
「うぅ~、まだ寝ていたいのに」何とかベットから起き上がると、そこには最高の朝ごはんがあった。目玉焼きとバターロールとフルーツジュース。これも私が彼の質問に答えたものである。
「僕が作ったよ」と自慢げに微笑む彼。本当に可愛い。可愛すぎる!
最高の朝ごはんを最高の彼氏と食べ終わった頃、彼は言った。「リリー、準備して。今日は出掛けるよ。」あぁ、そうだ!今日は私がプロポーズされる日だ!何故か肩に力が入った。
アパートを出たところで、「忘れ物がある」と言って彼は引き返した。仕方なくコンビニで彼を待った。しばらくして彼が登場!カチッとした新品スーツ(&なぜかサングラス)を着ている!!
「何!これ!買ったの?すごい似合うじゃん。」彼のスーツ姿を見たのはこの時が初めてだった。本当によく似合っていた。長身でスキンヘッドの彼がスーツ着てサングラスをかけると、まるで何かの映画にでてくる銀行強盗?みたいでカッコ良かった。
「今日のプランは全部僕に任せてね!」とニコニコしながら言う彼に最初に連れて行かれたのは、日本で一番高い海岸タワー、「福岡タワー」だった。天気がとても良かったので、キレイな百道福岡タワーの海と福岡市の街全体を見渡すことができた。地元・福岡を見下ろしながら、あぁ、幸せだなぁと思った。幸せってこういうことなんだと思った。
その後、彼の趣味のカメラでこれでもか!というほど写真を撮り、2時間ほどしてタワーを降りた。
「次はプリクラを撮りに行こう!」と彼は言いながら、ポケットから走り書きしたメモを取り出し、何かを確認した。「この近くのホークスタウンに“美人”って言うきれいに撮れる機械があるからそこに行こう!」
全くどこで仕入れた情報なんだろう?プリクラの機械まで調べるなんて!と関心しながら彼について行くと、突然彼は立ち止まり、「やっぱり時間がないから後にしよう!」と言い出した。
この先一体何を計画しているんだろう?自分の子どもの運動会を見守る親のような気持ちになった。逸る気持ちを抑えきれない彼を見守りながら、私はただただ幸せだった。
次に到着したのは、福岡の隠れデートスポット、「愛宕神社」だった。しかしここに来て、思わぬトラブル発生!!2日前に私は東京のホテルで足を捻挫し、これまで痛みを我慢し続けていたのだが、ついに歩けなくなってしまったのだ。足の筋がひっぱられるように痛い。もう歩けない。すると彼は私を肩車し始めた。以前も私が酔ったときに彼は肩車してくれた。気持ちは嬉しいのだが、さすがに真昼間で人が見る中、大の大人が肩車されるのは恥ずかしい。
「降ろして!ねぇ、もう恥ずかしいから降ろして!」

「いや、だめ!怪我してるんでしょ。」

そんなやり取りを30分ほど続けて、彼は言った。「あぁ!ヤバイ!夕日に間に合わない!」
夕日?


「もういいや、ここで歌うね。」そう言って彼は、私が東京にいた間に一生懸命練習したレミオロメンの「3月9日」を歌った。私を肩車しながら、時々メモを取り出し歌う彼。彼の優しい歌声がそよ愛宕神社風に乗り、オレンジ色になった世界に舞う。

淡く、優しく私の耳に届く。彼の踏み出す一歩一歩に私の体と心が揺れる。時間が止まったみたいだった。こんなに穏やかな世界があったんだ。こんなに優しい世界があったんだ。

歌い終わった彼は、「本当は神社で夕日を一緒に見ながら歌うつもりだったんだ」と残念そうに言った。いろんなサプライズを考えながらも、いつもの通りに少し遅れてしまう彼が何とも愛おしかった。彼はいつだってそうだった。彼の愛情はいつも少し遅れて私に届く。

 

「次はこの近くの本格フレンチレストランに行くよ!」気を取り直して言った彼。ところが、携帯の地図と何度睨めっこしてもそのレストランは見つからない。通りかかる人に道を聞いて何とかたどり着いたが、そのレストランは閉まっていた。「何で?何で?ネットでは今日開いてるって書いてあったのに!」何度もつぶやく彼。もう何だか見ていられなくて、落胆する彼に言った。

「よし!あたしマリノアシティー(観覧車のある福岡のアウトレットモール)に行きたい!あそこにあたしが福岡で一番好きなレストランがあるんだ!2人で観覧車にも乗りたい!今から行こうよ!」

なんとしてでも彼のプロポーズ大作戦を成功させたかった。彼がこんなに頑張ってるんだから。それに早くプロポーズの言葉が聞きたい!

夜の観覧車マリノアシティーに着いた私たちは、私が福岡で一番好きな海を見渡せるレストランで食事をとり、夜の観覧車に乗った。夜の観覧車は玉手箱のようだった。周りのビルや街頭がキラキラ光り、宝石のようだった。

はしゃぐ私の隣で、いつも饒舌の彼は黙りこくり、やたらとソワソワしていた。何ともいえない雰囲気の漂う私たちを乗せた観覧車は、ゆっくり、ゆっくりと上昇する。そしてちょうど頂上に着いたころ、意を決したように彼が言った。

「今までいろいろありましたね。僕はこれからもずっとリリーと一緒にいたいです。リリーを幸せにしたいです。リリーを幸せにすることが僕の幸せだと気がつきました。リリーと一緒に僕らの子供を一緒に育てて、一緒に仲のいいおじいさんとおばあさんになりたいです。僕と結婚してくれますか?」

嬉しかった。今まで生きてきた中で、こんなに嬉しい瞬間はなかった。嬉しくて目が潤んだ。彼の純粋で綺麗な心が伝わってきて、もう世界に彼がいてくれればそれだけでいいと思った。

彼だけがいてくれればいい。彼の腕の中に飛び込んで、「はい。」と答えた。彼は指輪の箱を開け、ダイアモンドの付いた婚約指輪を私にはめた。世界で一番きれいなその指輪は、サイズを聞き出せなかったせいか私にはブカブカだった。その大きすぎる指輪を見つめながら、私は嬉しいのと同時に安心して肩の力が抜けた。

あぁ~、終わった。これで無事に終わった。良かったぁ~。そう思っていたら、彼が聞いてきた。

「もしかして、知ってた?」

彼は鋭い。私の言動から私が何を考えているか、いつも言い当てる(私がわかりやすいから?)。そしてそう簡単に嘘をつける相手ではない。観念して、全てを告白した。彼は少しがっかりした表情を見せた後、大笑いした。それから2人でずいぶん長い間、大笑いした。

彼:「何だ!知ってたの?」
私:「だって色んなヒントくれるんだもん!」

そんなこんなで、最後の最後まで「予想外」なことが立て続けに続いた彼のプロポーズ大作戦は幕を閉じた。私たちの一生に一度のプロポーズは、何とも「私たちらしい」ものだった。

 

結婚を約束した私たちはその後、膨らむ夢と厳しい現実の狭間で揺れることなる。

[国際ラブストーリー7~婚約後に深まる2人の溝] に続く・・・


4 コメント

  1. 銀行強盗かいw
    読んでてドキドキした~!
    超素敵なプロポーズやね♪
    プリクラの機械まで調べとるとか可愛すぎ♪
    そのときの気持ちを忘れずにいつまでも仲良くね☆
    3月9日初めて聴いたけどいい歌やね~。

    • そうやねぇ!プロポーズとか大切な日のことは日記とかに書いてたほうがいいかもね。
      そしたら結婚後~十年しても、その時のことを思い出せるし。

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