在パリ日本大使館は、フランスの有料テレビ、カナル・プリュスが東日本大震災の直後に放映した風刺人形劇の人気番組に「被災者感情を傷つける場面があった」として、3月にテレビ局側に抗議したことを明らかにした。

 

問題の番組は、3月中旬の4日間にわたり放映された「レ・ギニョル・ド・ランフォ」。原爆投下後の広島の写真と今回の震災で被害を受けた仙台の町並みを比べて、「日本は60年間も復興に向けた努力をしていない」というせりふをつけたり、福島第一原発の周辺で復旧作業にあたる作業員をゲームのキャラクターに模したりした。日本の国旗に核マークをあしらったものもあった(動画参照)。


日本大使館はフランス在住の日本人の視聴者から連絡を受け、番組内容を確認したうえで、3月18日付でカナル・プリュスの編集局長あてに文書で抗議。同21日には口頭で抗議したところ、テレビ局側は「ギニョルはいかなる対象も風刺する番組で、人を傷つけるのが目的ではない。表現の自由がある」などと答え、謝罪はしなかったという。

 

カナル・プリュスに対しては、ネット上でも「さすが、フランス!低脳な番組だなっ!」、「この番組を作った奴が不幸になりますように」などといった批判声が寄せられている。しかし、テレビ局側が説明しているように、これはあくまで風刺する番組であり、視聴者側にユーモアを理解する心がなければただの悪口番組で終わってしまう。


 

そもそも、フランス人と日本人のユーモアは違う。お笑いのセンスが異なるのだ。フランス人はウィットのきいた会話を好む皮肉屋だと言われているが、それはお笑いに関しても言えることで、フランス人のジョークは風刺や皮肉など少しひねったものが多い。反対にフランスのジョークに比べると日本人のお笑いはとても素直でわかりやすい。今回のギニョル問題も、このお笑いセンスの違いからくるものではないかという気がする。その証拠に、この番組には日本の震災被害以外にももっと強烈な批判をしているものがいくつもある。

 

東日本大震災の直後、フランス在住の日本人はたくさんフランス人から電話やメールをもらった。私もその一人であるが、日本にいる家族の安否を心配し、私に電話をしてきた知り合いのフランス人男性はこんなジョークを言って笑った。

「でもこれでたくさんの人が死んだから、そのぶん就職口が広がるね。良かったじゃん、日本。経済危機もあってずっと就職難だったけど、みんなが死んでくれた分、仕事も見つかるよ。」

彼が最初からジョークのつもりで言っていることはわかっていたが、まったく笑えない。震災で苦しんでいる人がいるのにその言い方は何だと抗議すると、案の定「ジョークだよ」と言われた。こんな災害時にもお金のことや自分のことしか考えない人を皮肉ったジョークだと説明されたが、今でも納得がいかない。

 

しかしながら彼がこのようなジョークを言ったのも、(実際ははずれたが)私が皮肉を理解してくれると見込んだからである。これと同じで、フランスのテレビ局・カナル・プリュスも在仏日本人を含めた視聴者全員が皮肉を理解してくれるものと決めつけたのではないか。表現の自由であると説明されればそれまでだが、国の報道機関である以上、もう少し報道責任を果たしていただきたいと思う。

いずれにせよ、被災者感情を傷つけているとも捉えられるようなギリギリな風刺番組を放送できたのもフランスが日本の震災被害が他人事であるからに他ならない。


12 コメント

  1. 就職難って言ったって、フランスほどじゃないからね。。。。

    笑えないジョークは困りますね。

  2. >「日本は60年間も復興に向けた努力をしていない」
    ってのは被災者には失礼だけどユーモアがあってジョークとして成立してるけど

    >「でもこれでたくさんの人が死んだから、そのぶん就職口が広がるね。良かったじゃん、日本。経済危機もあってずっと就職難だったけど、みんなが死んでくれた分、仕事も見つかるよ。」
    この発言はフランス人にとってもジョークとして成立してないのでは?ただ寒いだけってかんじでユーモアが含まれてるとは思えない。ただの嫌味ってかんじですね。

  3. 発言するものはそのジョークが誰かの気に障ったときなぜ自分のユーモアが理解されないのか。理解しない相手が悪い、自分は間違っていないと思い込みたい。
    逆に気を悪くした側は、その発言自体に腹だ立てるというよりは、相手がこのユーモアを理解するだろうというある意味押し付けのようなものを感じ、相手の心を無視し、そのジョークを言おうとするその無神経さに腹を立てるのではないかと思う。
    私もフランス人の友の発言に何回も腹を立てたことがあり、決まって相手はsecond degré と返してくる。このやりとりは毎回想定できており、私が怒る理由は、発言そのものに対してよりも相手がもしかしたら気分を悪くするのではないかというリスクを犯してまでも言ってくるずぶとさにカチンとしてしまう自分がいる。また決まってその理由としてsecond degré または juste une plaisanterieに逃げる態度も好ましく思えない。 なぜならその魔法の言葉を言ってしまえば、自分はユーモアがわかる人間、お前はユーモアがわからない人間という縮図が出来上がってしまうからだ。とくにユーモアや言葉の文化が高いフランスではユーモアを多彩に操る人間が評価されている。

    しかし必ずしもフランス人のすべてがすべてのユーモアをすばらしいものと思っていないことは言っておきたい、 いいユーモアもあればレベルの低いこのようなケースのユーモアまであるから あるいみポピュラーな番組で大衆向けにすればこれまでレベルが下がるのはしょうがないだろう。

  4. ジョークを言った人間が悪気は無いと思うことと、
    ジョークを言われた相手が悪気はないって思うかどうかは別問題

    カタツムリの食い過ぎで遺伝子レベルで頭がおかしくなっているらしい

  5. あ~、なんか泣いちゃった・・・・。
    涙出ちゃった・・・・。

    ジョークって難しいですね。
    政治家とかの風刺ならいくらでもって感じですけど、
    人の命が絡むジョークは言っちゃいけないと思うな。
    一生懸命作業されてる方を風刺するのも止めて欲しいな。

  6. 所詮、地球の裏側の話で、危機感も同情心もわかないでしょう。日本でもリビヤやエジプトとなると、知らん国だし。

    実際起こらなかった事でなら命ジョークも許されますけどね。

    世界中の豪華客船が沈んだら世界の平均年齢は1.4歳下がるだろう、とかね。

  7. わかるなー、こういう人いるよね。私の周りにのフランス人もこんなのばっかりで毎日泣きそうになる。言い返して会話をはずめろって皆にいわれるけどわたしには出来ない。。。

  8. フランスは核推進国で、日本の原発にも核燃料を売って利益をえているクセに!だ。フクシマ事故後に脱原発を決めたドイツに言われるのなら納得がいくが。ドイツのとなりで原発推進の「迷惑国」!

  9. フランスによる震災被害への中傷を持ち上げるフランス好き日本人もいて、二重に腹が立ちます。

    ■仏TV司会者の「川島のフクシマ効果」のギャグに感謝します
    村野瀬玲奈の秘書課広報室より

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