
フランスでは今週から夏時間だ。夏時間が始まる日を覚えていない筆者は、毎年サマータイム実施直後のパソコンの時刻を見てびっくりする。
「あれ?もう1時間進んでいる?あぁ、そうか。サマータイムが始まったのか…。」
お昼の2時だと思っていたのに、本当はもう3時になっている。知らぬ間に1時間奪われたような、損した気分になる。サマータイムになった瞬間から、家中の時計と腕時計を全て1時間早めるという何とも面倒な作業が待っているのだ。
昨日までは6時に日が暮れていたのに、今日は7時になってもまだ明るい。「外は明るいのにもうこんな時間?」と時計を見ては驚く。たった1時間なのに、身体と感覚がすぐには慣れない。それがサマータイムだ。
筆者にとっては面倒でデメリットでしかないサマータイムだが、実はサマータイムには省エネ以外にも素晴らしいメリットがあるらしい。そこで今回は英紙『The Week』のサマータイムに関する記事を参考に、あまり知られていないサマータイムの真実に迫ってみる。あなたは日本のサマータイム導入に賛成ですか?
メリット1:健康的になれる
専門家によれば、午後の明るい時間が長くなると健康にもいいことがある。サマータイムになると夜になるのが遅くなり、平日でも遊んだり買い物したり外に出て活動したくなる…という人が多いが、実際に日が長くなると人は活動的になるようだ。
2万3000人の子どもを対象にした最新の調査によると、「サマータイム時は冬に比べて、日常活動のレベルが15~20%アップする」とBBCは発表した。逆に、時計の針を1時間戻す冬時間では身体活動のレベルが5%落ちる。健康という側面から考えると、人を活動的にさせるサマータイムは運動不足の解消、肥満防止、うつ病予防などプラスの面が多い。
メリット2:省エネ
サマータイムは日没から就寝までの時間を1時間減少させ、照明用の電力の消費量を1時間分減少させることができるという点から省エネに効果的とされてきた。実際にどれくらいの効果があるのか。
1990年代に発表されたイギリス一般財団法人の調査によると、サマータイムの導入により1年間に2億6千万ポンド(約460億円)の節約ができるという計算になる。さらにケンブリッジ大学の研究者が発表したところによると、冬の日照時間が1時間長くなることで節約できる電気代は4億8500万ポンド。これは国民7万人分の二酸化炭素排出量を減らすのと同じ効果があると言われている。
メリット3:交通事故の予防
日本警視庁交通局の発表によると、死亡事故の約半数(同51.3%)が「夜間に起きた事故」である。夜間の死亡事故率(交通事故全体に占める死亡事故の割合)は昼間の2.9倍の1.25%である。この数字から見ても暗くて見通しの悪い道路では死亡事故が発生しやすいことがわかる。
日が長くなるサマータイムを導入すれば、それだけ死亡事故が減る。イギリスの調査によると、交通事故で亡くなる人の数を毎年100人減らすことができるらしい。
メリット4:犯罪の予防
英国犯罪調査によると、刑事犯罪の半数は午後や夜の遅い時間に起きている。サマータイムで日照時間が長くなれば、その分犯罪を減らすことができるのではないかと言われており、犯罪の予防にも効果がある。夜の遅い時間にどうしても外出しなければならない時にも、外が明るければ犯罪を恐れることなく外出できる。
メリット5:観光業が潤う
日が暮れるのが遅くなれば外出している時間が長くなり、それに伴う経済効果も期待できる。The British Association of Leisure Parks, Piers and Attractions(BALPPA)の2011年度調査によると、遅くまで明るいサマータイム時の観光業界の売り上げは全体で25億~35億ポンド上昇するといわれている。
まとめ
確かに時間を1時間早めることのメリットもあるようだ。しかし、日本で導入するとして同じようなメリットが期待できるかといえば、微妙である。
緯度が高いヨーロッパでは、サマータイムを導入しているせいもあって、真夏の日没時間は夜の10時くらいになる。反対にクリスマスの時期には夕方の5時半には真っ暗になってしまう。これくらい夏と冬での日没時間が異なる国ではサマータイムの導入による効果が期待できるが、日本の場合、緯度の高い北海道や東北地方以外ではメリットがあまりない。
日本でも夏時間を導入すべきかという議論があるが、基本的にサマータイムの導入はどこの国であれ、”できるだけ避けたいもの”なのではないのか。これらのメリットも結局は「実施してみたらこんな副産物もあったよ!」という程度のものでしかないのでは?
やっぱり、サマータイムはないほうがいい、と思う。
あなたはどう思いますか?
参照:The week