なぜ日本人は「里帰り出産」を選ぶのか?フランスから見た日本の出産事情

前回の記事では、日本人の6割以上が選ぶ「里帰り出産」が、フランス人にはすこぶる評判が悪いと伝えた。

旦那との夫婦関係を大切にせず、自分がラクしたいがために親に頼って里帰り出産をする妻と、最初から育児にかかわることを放棄し、家族よりも仕事を優先する夫。

フランスの常識に当てはめると、日本の「里帰り出産」はこのように思われてしまうのだが、日本での出産事情を考慮すると、そう厳しく批判できない日本の事情が見えてくる。


そこで今回は、なぜ日本人は「里帰り出産」を選ぶのか?を探ってみる。「里帰り」を後押しする日本の厳しい出産事情を、フランスでのケースと比較してみようと思う。あなたは日本の出産事情について、どう思うだろうか。

 

1無痛分娩が難しい

出産後は身体へのダメージが非常に大きく、一人で育児と家事をするのことが難しいので、里帰りして実家の両親に手伝ってもらう。これが日本人が里帰り出産を選択する一番大きな理由だそうだ。

しかし、これは日本で主流な自然分娩の場合で、欧米で主流の無痛分娩の場合は、「産後の体力の回復も比べ物にならないくらい早い」らしい。フランスで無痛分娩をしたことのある日本人ママは、口を揃えて「無痛で良かった」と言う。無痛分娩と言っても実際には痛みもあるし、自然分娩と同様にデメリットもあるのだが、産後すぐに体力を回復でき、子育てに専念できるというのは大きなメリットではないだろうか。

もちろん、日本にも無痛分娩は存在するが、主流でないがゆえに実施している病院の数が限られており、麻酔専門医が硬膜外麻酔を行なわず、産婦人科医自身が判断し、担当しているケースが多いため、危険性も高いとされている。さらに分娩費用も自然分娩より、1~16万円多くかかる。

以上の点より、日本では産後の回復に時間がかかってしまう「自然分娩」が主流となっており、これが産後の里帰りを後押ししている一つの原因だと考えられる。

2男性の育児休暇がとれない

日本でも父親の育児休暇は法律で認められている。しかし、ヨーロッパ諸国に比べて男性の育児休暇取得率は極めて低く、2012年度の男性の育児休業取得率はわずか1.89%。たとえ育休を取ったとしても、期間は短く「1~5日」が4割、「5日~2週間」が2割と2週間未満が6割を占める。要するに、日本では父親の育児休暇はないに等しいというのが現状なのだ。

これに対し、フランスでは男性の育児休暇は11日間出産休暇は3日取得することが可能である。連続取得の場合、最大14日間の休暇を申請できる。取得率も高く、現在フランス人の父親は10人に7人がこの制度を利用している。

これは妊娠中の女性からすれば、かなり心強い制度だ。逆に、初めての出産で、かつ仕事に忙しい旦那に全く頼ることができないとなれば、親を頼りたくなる気持ちも理解できる。出産退院後につきっきりで育児や家事の手伝いをしてくれる旦那がそばにいてくれるのなら、わざわざ里帰り出産をして旦那と離れ離れになる生活を選択する女性は少なくなるのではないだろうか。

3家事分担の文化がない

世界的に見ると、日本の男性の家事時間はワースト2。共働き世帯の家事分担比率は、「夫10%妻90%」が最多である。若い夫婦ほど夫の家事参加率はあがっているというデータもあるが、まだまだ日本の男性は共働きであっても、妻に家事&育児を任せているという人が多いようだ。

しかし、これは男性ばかりを責められない。夫婦共働きが増え始めたのもつい最近のことであるし、子供の頃から父親も協力して家事を分担している姿を目にしていた欧米人の感覚とは違う、というのも無理のない話だ。それに加え、日本ではまだまだ女性の出世が難しく、家事&育児と仕事を両立する社会システムも整っていない

国立社会保障・人口問題研究所の「出生動向基本調査」によると、2005~2009年に出産退職した人は43.9%。妊娠前から無職だった24.1%と足し合わせた数値で見ると、68%になる。

このような状況だと、いくら共働きとはいえ父親の「家計を支えていくプレッシャー」が大きくなってしまい、家族や子どもの養育費を満足に稼ぐために、目先の休みよりも仕事を優先せざるを得ない現状がうかがえる。

よって、実際に日本の男性がヨーロッパのパパのように育児休暇をとったところで、本当にそれが妻の役に立つかどうかは疑問である。出産だからといって急に休みをとっても、日頃から当たり前のように家事をしているヨーロッパ男性のようにはいかないのではないか。そうなると、「里帰り出産」という選択のほうが妥当である。

4母乳信仰

日本に住む欧米人ママはよく、「日本は母乳信仰の国」だと言う。子育てするうえで母乳で育てるのが一番良いとされており、母乳を絶対視しているため、母乳が出ない女性はストレスが溜まりやすいという話を耳にすることも少なくない。

しかし、この母乳信仰というのは何も「母乳」だけに限った話ではないような気がする。日本では子育てにおいて、「母親ならこうすべき!」という縛りが多すぎるのではないだろうか。日本の母乳信仰というのは、日本のお母さんたちへ向けた「こうじゃないとダメ」という押しつけの最たるものである。

例えば他にも、「幼稚園の入園バッグを手作りにしてあげたほうが良い」という風潮や、「子どものお弁当はキャラ弁のように可愛らしくしたほうが良い」という社会的な圧力もこれに当てはまる。

個人主義の欧米では、あまり「親ならこうすべき!」といったお節介な話を耳にすることはない。「よそはよそ、うちはうち」という教えは言葉だけではなく、各家庭の親が自分の子どもにいいと思ったことを自由にやっていると言った感じで、他の家庭には口を出さないのがルールだ。


出産した途端に、「母親はこうあるべき!」という社会的価値観にがんじがらめになってしまう日本では、母親にかかる心理的圧力も計り知れないだろう。

おわりに

これらの事情があり、出産を控えた女性が親に頼らなければいけない状況になってしまっていると言える。やはり、欧米に比べ、日本の出産&育児事情は厳しい。そしてその原因は、日本の”職場環境”にあるのではないだろうか。前回の記事で、里帰り出産は日本人の結婚観、夫婦関係、家族観、はたまた日本社会全体の「象徴」であるといったのは、このへんから来ている。

日本がもう少し、個人のワークライフバランスを尊重するような社会に変わっていけば子育てしやすい環境になるのになぁ、と残念に思う。日本人一人一人がもう少し自分の時間を持てるようになれば、恋愛だって結婚だって「普通」にできる社会になるだろうし、少子化に歯止めをかけることができるかもしれない。

なぜ日本人は「里帰り出産」を選ぶのか?

それは、そうせざるを得ない厳しい事情があるから、という気がしてならない。


2 コメント

  1. 無痛分娩だから体の回復が早いというのは間違っていると思います。
    無痛分娩のせいで、不必要な医療介入があり、普通の分娩より体の侵襲が大きくなる場合もありますので。

  2. 里帰り出産は日本の歴史的な習慣ですから外国人にとって異様に見えるのは不思議ではありません。
    「出産に関わる里帰りと養育性形成」という論文によりますと。他の先進国には見られないそうです。
    里帰り出産は古くは古代、文書で確認できる範囲では江戸時代から連綿と続いています。
    元々日本は母系社会でしたから出産において男性が果たす役割は非常に低いものでした。

    少しネットで検索すれば出てきそうなことを根拠ない推論で書かれるのは如何なものかと思います。
    もし可能であれば導入部分に歴史的背景を説明し、それから現代の妊婦を取り巻く問題としてご自身が考えられた4つのポイントを提示させた方が自然ではないでしょうか。

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