シリア危機に、国際社会はどう立ち向かうのか。

 日本ではあまり報道されていないかもしれないが、シリア危機は国際社会が非難だけしていればよい時期をとっくに超えてしまった。今も、ニュースが流れているが、治安部隊という名の殺人部隊が、戦車で一般市民を無差別砲撃している。

シリアと言えば、アメリカがテロ支援国家と認定している国であり、40年にわたってアサド政権による独裁政治が行われてきた国だ。今回の、無差別砲撃により、デモ開始以降の死者数は350名を超えているいるようだ。


チュニジア、エジプトで始まった、民衆革命が各国に広がる中で、独裁政権と評される国も2極化したように思う。サウジアラビアのように裕福な国は、国民にアメを配ることで時間を稼ぎ、怒りが収まるのを待つことにした。それができない貧しい国は、徹底的な弾圧だ。

シリアは、貧しい国で、国民は、他の国々と比べても厳しい圧政下に置かれてきた。彼らは、チュニジアやエジプトを見て、同じことが出来ると思ったわけではないと思う。同じことをやっても殺されるだけと思っていたはずだ。しかし、絶対に刃向かうことはないと思われたリビア国民の反乱が、NATO軍の支援を得たのを見て、自分たちも彼らを味方につければ勝てるのではないかと思わせたのだろう。

しかし、リビアにおける内戦は、NATO軍が加勢した後も、混沌として出口が見えない。これは、シリアの反政府サイドの市民達にとっては、大いなる誤算だと思う。


それに、アメリカも欧州も、もともと内部に問題を抱えていて、本当は、他国に構ってばかりいられないという心境でもあろう。勢い余って介入に踏み出したリビア情勢は泥沼だが介入した以上逃げ出すわけにもいかず、これ以上他地域に戦線を広げるのは色んな意味で苦しい。

リビアに出向いているのはNATO軍であるが、NATOといういのは、そもそも、冷戦時にソ連軍等の攻撃に備えるために組織された共同防衛のための同盟であって、アフリカや中東の内戦に介入することは、本来の目的と合致していない。したがって、この戦いで多くの戦死者や出たり戦費が費やされることの説明も付かないであろう。

穿った見方をすれば、リビアの場合には、新政権を樹立してその政権と親密になることで石油開発等の利権を得ようという動機が背景にあることは推察できるが、シリアについては、貧しい国であり、見返りは殆ど期待できないという背景も関係しているだろう。

シリア国民の反乱は、簡単に治まることはないだろう。鉾を収めれれば、一族郎党が悲惨な目にあうことを圧政下に暮らしてきた彼らはよく知っているがゆえの、不退転の決意なのだから。だが、国際社会は、これ以上、シリア国民が治安部隊という名の殺人集団に殺されるのを座して見ていてよいはずはない。アメリカも非難のレベルを上げて、動き出す気配を見せている。とにかく、世界が協力して殺戮を止めたい。

シリア危機に、国際社会はどう立ち向かうのか。―ロンドン新(米)所長日記,写真:Taras Kalapun


2 コメント

  1. >>40年にわたってアサド政権による独裁政治が行われてきた国

    これは正確ではないですね。
    父親のハーフィズ・アサドが30年、息子のバッシャール・アサドが10年、です。

    中東の一連のデモ(なんちゃって革命)は、欧米主導です。
    目的は、石油、親欧米傀儡政権の樹立(リビア、シリアの場合)、twitter、フェイスブックの宣伝キャンペーン(エジプトの場合)による個々のアラビア人のプロファイル作成、その他いろいろあるんでしょう。

    シリア民衆は卑怯ですね。
    このデモは、1980年代に、父親のハーフィズ・アサドの時にやるべきでした。
    1980年代、ハーフィズ・アサドは市民の虐殺を遂行しており、ハマの街(シリアで5番目の都市で人口40万人)では、成人男子は一人残らず処刑(虐殺)された、とさえ言われていました。
    90年代に入ってからも、夏休みに海外留学先からシリアに帰省した学生が空港からそのまま連行され行方不明になったケースも数多くありました。
    にもかかわらず、そのころのシリア国民は見て見ぬふりをしていました。
    もちろん、欧米も黙視(むしろ歓迎していた。)。
    その父親と比べ、息子のバッシャール・アサドは在任10年ですが、悪い噂は聞きません。
    むしろ、父親と違い、息子の方は「悪くない。」という好評判でした。

    悪事の限りをつくした強面の父親の時には、おとなしくしていて、同胞を見殺しにし、
    おだやかで優男の息子の時には、ナメてかかって、父親の時の恨みを(まだ罪という罪をおかしてなかった)息子に対してはらそうとする。
    こういうのを「卑怯」というのでしょう。(恨みは直接本人にしろ。)

    息子バッシャール・アサドはカダフィの例も見てましたからね。
    たぶんもう「死」を覚悟しているでしょう。
    「泥沼の内戦」で、バッシャールはリンチ死、アサド家は赤子に至るまで処刑(暗黒の中世のよう)、国民は疲弊し、その後は、イスラエルの地図が大きくなる、と予想できますね。

    シリア国民は馬鹿ですね。

  2. 中東情勢の解説者はやたら個人名や宗派名を出して知った気になるだけで
    結局国民がどういう思想に分かれて何に憤慨しているのか、
    政府は具体的にどの点で怠慢しているのか何も言及しないので見ててイライラします。

    大元の構図は欧米が略奪しているエネルギー利権や欧米に買収された政府と、公平な富の分配が行われない国民が対立してるってことなんじゃないんですか?
    まぁ報道流してるのが欧米メディアなんで自分達がやってる悪事はひた隠しにしたいでしょうが。
    兵器輸出で稼いでる国も大勢(軒並み欧米)いることですからどこかで戦争はやっててくれないと困るでしょうしね。

    自称中東事情通はそんなに何でも知ってるなら根本原因を説明してくれないとただイスラム教に対する悪い印象を与えるだけで何も世の中を良くしないと思います
    誰がどこで何人殺したとかまるでスポーツ実況か何かのようにとらえてる人多くないですか?例えばこのコメント欄にいる匿名希望さんみたいな。

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